銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2019-01-01から1年間の記事一覧

日銀への「スルガ銀の虚偽報告等は法令違反ではない」というちょっとした事実

スルガ銀行にいわゆるシェアハウスへの不動産担保融資問題が発覚してから、相応の時間が経ちましたが、スルガ銀行の経営はいまだ落ち着きを取り戻してはいない状態にあります。 その中で、2019年10月に日本銀行(日銀)がスルガ銀行に対して経営管理態勢の改…

台風襲来に大災害債券「CATボンド」を確認する

大型の台風が日本に迫っています。まずは、被害が出ないように祈るばかりです。 台風のような災害に対して金融はどのようなことが出来るのでしょうか。 火災保険や地震保険は分かりやすい例でしょう。残念にも建物に被害が出た場合等には補修費用を銀行が融…

在職老齢年金制度見直しの現状〜ちょうどよい見直しでは?〜

厚生労働省が働く高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度を見直すと報じられています。 現在は65歳以上で47万円を超える月収がある人は年金が減りますが、月収の基準を62万円に引き上げて対象者を減らす案を軸に議論するとされています。 年金が減る仕組みは…

クラウドファンディングは金融機関の存在意義を考えさせる~出版の場合~

以前お知らせ致しました筆者の小説「ヂメンシノ事件」の出版にかかるクラウドファンディングのスタートが近づいてきました。 現在、募集のプロジェクトページ初稿を運営会社に提出したところです。 <プロジェクトページ/限定公開URL> camp-fire.jp https:…

年収890万円未満は"社会のお荷物"という説に言いたいこと

近時、所得や税金、社会保障についての話題が増えました。 金融庁の審議会が発表した報告書が、老後に公的年金だけでは足りず30年間で2,000万円必要と指摘した老後2,000万円問題や、年金の所得代替率が低下する年金財政検証、消費増税等、話題には事欠きませ…

WeWorkの企業評価復活は非常に難しいことを簡単に確認する

(写真は同社上場申請書類から) コワーキングスペースを世界中で展開し、ソフトバンクグループが出資したことでも有名なWe Workが話題となっています。 企業価値は470億ドルとされていたものが、いっきに半分以下の評価へ下落すると報道され、その後、上場…

クラウドファンディングExodus(エクソダス)にて小説出版に挑戦します!

読者登録を頂いている皆様へ この度、チャンスを頂き、クラウドファンディングにてEXODUSからの出版に挑戦することになりました。(サイトは以下)https://exodus.jp/ 現在、当ブログの姉妹サイトにて公開している経済小説「ヂメンシノ事件」を改訂して出版…

貧乏人ほどタピオカやスタバを好む理由

「貧乏人ほどスタバでコーヒー買うか、タピオカのドリンクを飲む」傾向にあると聞いたら、どのように感じるでしょうか。 知人の経営者から筆者がこの話を聞いた時には、最初はバカにされているような気分になったものですが、後から妙に納得したものでした。…

温暖化による海面上昇は不動産に影響を与えるという無視できない議論

地球温暖化による海面上昇が不動産にもたらすリスクが改めて注目され始めています。 現在、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が開催されており、公表される報告書の内容が報道されていることも要因です。 今回は、地球温暖化による海面上昇につい…

口座維持手数料は愚策〜銀行離れを加速させる可能性も〜

銀行の口座維持手数料導入の動きが出てきています。 各国が金融緩和に動く中、日本銀行もマイナス金利の深堀を行う可能性が出てきたことに起因するものでしょう。 今回は銀行の口座維持手数料について簡単に考察してみたいと思います。 直近の動き なぜ口座…

株主優待をもてはやす風潮は「株式市場を弱めている」可能性も

多くの企業の中間期末である9月末が迫ってきました。 株式投資家にとっては中間配当が気になる時期ですが、株主優待に関する特集も様々な媒体で組まれています。 株主優待は個人投資家に人気で、株主優待生活を実践している有名投資家も存在します。しかし、…

これから貸倒引当金の積み増しを金融庁から迫られる地銀の憂鬱

金融庁が金融検査マニュアルの廃止に伴い、銀行の経営を監督するための考え方を示す「ディスカッションペーパー」の案を公表しました。 今回は、金融庁のディスカッションペーパーから見える「金融庁の地方銀行に対する懸念点」について確認します。 ディス…

銀行の業況が厳しいことを「簡単な数字」で見る

銀行の業況が厳しい状況が続いています。 マイナス金利政策が導入され、貸出金利のみならず国債等の債券も利回りが低下しており、特に地方銀行は利益を確保するのに苦しんでいます。本業が赤字の銀行も多いとされています。 上記のような報道を目になさった…

「動産」を活用した新たな担保権創設とは?~ABL普及の障害要因~

日経新聞が法務省が「動産」を対象とした新たな担保権を創設する検討に入ったと報じています。 「動産」とは、生産設備のような機械や商品在庫がイメージしやすいでしょう。企業が事業を行っていくうえで保有・活用することが非常に多い資産です。 政府は、…

『覇権国家戦争』米国VS中国~歴史に学ぶ覇権国の条件とは~

米中の貿易戦争が開始されています。 この経済戦争は、両国の覇権争いであることは間違いありません。 そして、筆者の目から見れば、現時点では米国が優位であると思います。 しかし、米国の優位はいつまでも続くのでしょうか。 そもそも、米国はトランプ大…

金融庁がノルマより重視する経営理念とは?~基本的に銀行の体質はブラック~

銀行の経営環境は厳しい状況が続いています。米国は利下げに転じており、各国中央銀行の金融緩和競争が始まる可能性は高まっています。 現状では、銀行の経営環境が好転する可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。 このような環境下では、いくら立派な「…

年金財政検証の結果を勘違いしていませんか?

公的年金の財政検証結果が厚生労働省から発表されています。 この財政検証結果については、将来の年金受給者が現役時代と比べた際にどの程度の年金を受給できるのか(所得代替率)に注目した報道がなされています。報道の内容は、総じて「年金が将来も貰える…

韓国からの訪日客が減少するのは騒ぐべきことか?

日韓関係が冷え込んでいます。 「過去最悪の日韓関係」という言葉が、いつのまにかマスコミで使われるようになり、気づけばありふれたものになっています。 その中で、日本への韓国人旅行者が大幅に減少していると報道されています。 今回は、韓国人の訪日旅…

銀行の定期人事異動ルール廃止の背景には、キャッシュレス社会の到来があるのか?

銀行の定期異動ルールを金融庁が撤廃するとの報道がなされています。 銀行の担当者を定期的に異動させるルールは、不正や癒着防止のために作られたものです。このルールを撤廃するというのはどのような意味・背景があるのでしょうか。 今回は、銀行の定期異…

氷河期100万人就職支援施策についての単なる意見ですが

日経新聞が政府の氷河期100万人就職支援策について報道しています。 今回は、この支援策について簡単に所見を述べたいと思います。 報道記事 所見(単なる意見) 報道記事 まずは日経新聞の記事を引用します。 氷河期100万人就職支援、政府 研修業者に成功報…

Uber(ウーバー)の2019年12月期2Q決算~ソフトバンクGの株価に影響したのか?~

米配車サービスUber(ウーバー)の2019年12月期2Q決算内容がアナリスト等の想定を下回ったことから、ソフトバンクグループの株価が下落したと報道されています。 多数の人がUberというサービスを耳にしたことがあるのではないでしょうか? ライドシェアの大…

大塚家具の2019年12月期2Q決算は資金繰り懸念の払しょくできず

経営再建中の大塚家具が2019年12月期第2四半期の決算を発表しました。 中国企業やヤマダ電機との提携を行うことで大塚家具の業績は回復しているのでしょうか。 今回は大塚家具の2019年12月2Q決算について確認していきましょう。 決算概要 決算のポイント ま…

レオパレスの2020年3月期1Q決算は想定より若干悪いが、簡単には倒産しない

(画像と本文は関係ありません) レオパレス21の2020年3月期1Q決算が発表されました。 入居率は低下しており、赤字幅は拡大しています。 そして、過去に施工したアパートで、新たに2,450棟の物件で不備が見つかったおり、不備の物件数は2万2,139棟(7月末時…

銀行のダイバーシティ対応には障害者向けサービスは含まれないのか?

金融庁から「障がい者団体と金融機関関係団体との意見交換会」の議事概要が公表されました。 この議事概要には、金融包摂(インクルージョン)やダイバーシティ等、非常に重要な観点が入っています。 そして、筆者にとっても改めて銀行の公共性やサービス・…

日本全国の銀行員数の推移はこうなっている

銀行が「構造不況業種」と言われて久しい状況が続いています。 特に地方銀行の苦境は報道が相次ぎ、銀行員の退職が増えているとの報道も見られるようになりました。メガバンクもRPAやAIを導入し業務量の削減、新卒採用の抑制による人員減等の動きをしていま…

韓国向けの邦銀の貸出残高はどのようになっているのか?

日本と韓国との間で様々な問題が起こっています。 日本は韓国に対して様々な製品を輸出しています。経済的な繋がりは相応のものがあります。 同様に韓国に対しては、金融という観点でも関係があります。 今回は、日本の銀行(邦銀)が韓国に対してどの程度の…

賃金が抑制されてきた要因と、これから上がるかもしれない背景

日本では労働者の賃金が長期傾向として減少してきたことをご存知の方は多いでしょう。 しかし、なぜ賃金は減少してきたのでしょうか。 また、現在は人手不足と言われています。ヤマト運輸のドライバー不足の問題や、コンビニの24時間営業問題等が報道されて…

これでもメガバンクから投資信託を買いますか?

日本の投資家が購入している投資信託が、運用歴の長い商品にシフトしてきていると報道されています。 金融業界の販売姿勢が変わってきたことが主因と思われますが、金融業界自らが変わったというよりは、金融庁の指摘・圧力によって変わりつつあるという方が…

住友不動産が実施する株式持ち合い強化は投資家からどのように見えるか?

住友不動産が株式の持ち合いを強化したと報道されています。 多くの上場企業は、株式の持ち合いを縮小させているため、住友不動産の動きは目立ったようです。 株式の持ち合いは、当たり前のように「悪いこと」であると一般的にされていますが、これは何故で…

老後のために2,000万円を貯めることは実現可能か?

金融庁の審議会が発表した報告書が、老後に公的年金だけでは足りず30年間で2,000万円必要と指摘したところ、様々な批判を浴びたことは記憶に新しいところでしょう。 しかし、筆者は公的年金だけで老後を生活していくのは難しいのではないかと考えています。…