銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2018-01-01から1年間の記事一覧

株主優待は本質的には廃止すべき~株主優待は株主平等原則に反するという事実~

大和インベスター・リレーションズの調査によると、上場企業の株主優待実施率が過去最高を更新しています。 個人の株主にとっては、株主優待というのは投資する企業を選ぶための重要な要素の一つでしょう。株主優待を活用した生活で注目を浴びている有名な個…

スルガ銀行の旧経営陣提訴にかかる判断理由~調査委員会報告~

スルガ銀行が旧経営陣ら9名を提訴しました。 提訴理由はシェアハウスなどへの不適切融資により発生した損失への損害賠償請求です。 今回は、このスルガ銀行の提訴理由、内容について賠償責任の有無を調べる取締役等責任調査委員会の報告内容を確認します。 …

元本確保型投資信託の人気はプロ不在の証し

投資信託の販売が苦戦しているとされています。 この要因は様々ではあるでしょうが、金融庁の一連の指摘(毎月分配型の非効率性、運用実績に比した手数料の高さ、銀行の期末押し込み販売への懸念、回転売買への懸念等)から、銀行自体も販売を自粛している可能…

日銀のAIワークショップから学ぶ、銀行がデータビジネスに乗り出す背景と危機感

近時、AIという言葉を聞かない日はないと言えるでしょう。 銀行業界でもAIをどのように活用するのか、AIで何かできないか、AIを活用したIT企業・フィンテック企業に銀行業界が淘汰されるのではないか、等の話題が出ることが多くなっています。 今回は、日本…

ソフトバンクが目指す親子上場についての論点

ソフトバンクグループが携帯電話子会社としてのソフトバンクを上場させようとしています。 一方で、親子上場が減ってきているというニュースをご覧になった方もいるかもしれません。 親子上場は様々な問題点を含んでいます。 今回は、ソフトバンクグループが…

スルガ銀行の2019年3月期中間決算で予想されること

スルガ銀行の2019年3月期中間決算が大幅な赤字となることが報じられています。 赤字の幅は大きいですが、現時点では十分な自己資本があるため、銀行の自己資本比率規制はクリアしています。 しかし、なぜスルガ銀行が不良債権(この用語の使用が適切かは悩ま…

役員退職慰労金という嫌われもの~キーワードは株主との利害一致~

役員退職慰労金という言葉をご存知でしょうか。いわゆる企業の役員に対する退職金です。 この退職慰労金を廃止する上場企業が増加しています。 今回は役員退職慰労金が廃止されている背景について確認していきましょう。 報道内容 役員退職慰労金とは コーポ…

ソフトバンクグループの2019年3月期中間決算を簡単に語る

ソフトバンクグループの2019年3月期中間決算が発表されました。 内容は大幅な増益となっています。その主な要因はソフトバンク・ビジョン・ファンドによるものです。 今回はソフトバンクグループの決算を簡単に確認していきましょう。 決算概要 SVF事業の内…

【余話】スルガ銀行についての記事をまとめて電子書籍を出版しました

◆スルガ銀行~優等生からの転落~ 銀行員のための教科書 https://www.amazon.co.jp/dp/B07K5VSLQH/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_sSW3BbAYCMSTJ すごい時代になったと実感します。 ブログで個人の意見、解釈等を世の中に発信することができるようになりました。 そして…

在職老齢年金は廃止した方が良い~「生涯現役を実現」するしか道はないのでは?~

2018年11月2日に第6回社会保障審議会年金部会(厚労省大臣の諮問機関における部会)が開催されました。 この年金部会では名称の通り我が国の「年金」ついて議論がなされており、今回は「一定額以上の収入がある高齢者の年金を減額する制度である」在職老齢…

大塚家具の在庫一掃SALEの評価方法とSALEにおける狙い

大塚家具は、在庫品や店頭展示品の入替えのため、通常販売価格の最大80%オフという在庫一掃SALEを実施しています。セールは9月下旬から、全国12店で始めており、当初の10月28日までの予定を11月25日まで延長しています。 この在庫一掃SALEにより2018年10月…

三菱UFJ信託銀行の豪州資産運用会社買収の難しさ

三菱UFJ信託銀行がオーストラリアの資産運用会社を買収すると発表しました。国内金融機関による海外の資産運用会社の買収では過去最大規模となります。 今回は、この買収について簡単に考察します。 報道内容 買収のメリット 本件買収の留意点 報道内容 本件…

私立大学等の資産運用の現状~積極化はリスクと隣り合わせ~

私立大学が少子化への対応もあり資産運用を積極化しています。 今回はこの私立大学の資産運用について簡単に考察します。 報道内容 調査結果 所見 報道内容 まずは足元の動きをつかみましょう。以下、日経新聞の記事を引用します。 大学 リスク投資に軸足 20…

Tesla(テスラ)の2018年3Qは業績改善が見える決算結果

米自動車メーカーのTesla(テスラ)が2年ぶりに四半期で黒字化を達成しました。 Teslaはモデル3の量産体制構築に苦戦し、赤字が膨らみ、一部では資金繰り不安も囁かれるようになっていました。 今回はTeslaの2018年3Q決算について内容を確認していきましょう…

Amazon.comの2018年3Q決算は「期待外れ」なのか

Amazon.com(以下Amazon)の株価急落がニュースとなっています。 2018年10月26日には株価が約8%下げ、時価総額が米マイクロソフトに逆転され米国3位になりました。 この株価はAmazonが発表した2018年12月期第3Qの決算の影響とされています。 今回はAmazonの…

富士通が実施する従業員の大規模配置転換は何を意味するのか

富士通が5,000名規模の従業員を配置転換させると発表しました。総務や経理等の間接部門の従業員が対象です。 この対象者は営業やSE等に育成していくとしています。そして、配置転換後の仕事に合わない従業員は転職支援を行うのです。 この発表から読み取れる…

デジタルマネーでの給料支払は銀行への更なる追い討ちになる可能性

給与・賃金の支払いにデジタルマネーが認められるとの報道がなされました。 これは非常に驚きのニュースといえます。銀行のビジネスモデルの一端も崩れる可能性があります。 今回は、なぜ給与・賃金にデジタルマネーでの支払いが認められていなかったのか、…

日銀金融システムレポート(2018年10月号)のポイント

日本銀行(日銀)が半年に一度公表している金融システムレポートを公表しました。 今回はミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、有価証券投資にある程度焦点があたっています。 今回はこのレポートにつき概要を簡単に見ていくことにしましょう。 概要 今回…

債券と株式の関係をもう一度おさらいしてみる

債券と株式は逆相関の関係にあると言われます。 債券は金利上昇時に「値下がり」し、金利下落時には「値上がり」します。株価が上がるときには景気が良くなり金利も上がる(債券は値下がり)ため、債券と株式は逆の動きをしているとされています。 長く続いた…

日銀副総裁の講演にみる仮想通貨・デジタル通貨の今後

日銀の副総裁が「仮想通貨が支払い手段として普及する可能性は低い」との見解を示し、一部で話題となっているようです。 報道では細かい内容、ニュアンスまでは報じられていませんので、日銀の副総裁が具体的に何を語ったのかについて確認してみましょう。 …

KYBの免震不正問題は経営の屋台骨を揺るがす可能性あり

油圧機器メーカーのKYBが免震装置の検査データ改ざん、不適合製品の出荷を行っていたと発表しました。 本件は、以前騒ぎになった東洋ゴム工業が起こした免震ゴム不正事象と恐ろしいほどよく似ています。東洋ゴム工業は売上高のごくわずかを占める事業で巨額…

仮想通貨の証拠金取引の倍率上限は下がる方向に

金融庁が開催している「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第7回が2018年10月19日に開催されました。 当日時点では議事に使用された資料のみが公開されていますが、報道では仮想通貨の証拠金取引、信用取引について規制すべきとの議論がなされたようです。…

NTTドコモ「信用スコア」算出サービスの拡大は限定的である可能性

NTTドコモがスマートフォンの利用状況等を分析して個人の信用を算出するサービスを金融機関向けに実施すると発表しました。 今回はこのNTTドコモの取り組みについて考察します。 NTTドコモの発表内容 報道内容 サービスの背景 まとめ NTTドコモの発表内容 ま…

金融と、現在の金融機関と、未来の金融機関

我々は「金融」という言葉を何気なく使っています。 金融機関という言葉を聞くと、思い浮かぶのは銀行が多いかもしれません。しかし、保険会社も証券会社も金融機関と呼ばれています。銀行と保険会社、証券会社の共通点は何でしょうか。 銀行が「情報銀行」…

TKPと大塚家具の資本提携と、大塚家具の今後に起こる可能性があること

貸会議室大手のティーケーピー(TKP)の中間決算が発表されました。 TKPは大塚家具と資本提携を行ったことをご存知の方もいらっしゃるでしょう。 TKPはこの中間決算で大塚家具の株式の減損損失を計上し、最終減益となりました。そして、中間決算を受けて2018…

運用はインデックスでもアクティブでも良いが、最も問題なのは「個人の感情」である

インデックス型とアクティブ型の投資信託のどちらに投資すべきかという議論が近時なされています。 特に、森金融庁前長官が個人の運用についてはインデックス・ファンドを推奨したこともあり、個人投資家にはインデックスファンド信仰のようなものがあるかも…

米シアーズ(Sears Holdings)の破綻報道は、米国小売破綻ドミノの前触れの可能性

(写真は旧シアーズ・タワー/現在は名称変更) 米小売大手シアーズ(Sears Holdings Corporation)が米連保破産法11条(いわゆるチャプターイレブン≒日本における民事再生法)を申請すると報道されています。 一時期は通信販売で成功し、世界最大の百貨店(…

スルガ銀行の収益還元法による不動産評価という新しくて古い問題

シェアハウスオーナー向け融資等、スルガ銀行による投資用不動産融資問題が表面化して暫く経ちました。 通帳残高偽造の事象が有名になりましたが、それ以外にスルガ銀行の不動産評価についても問題があったことが明らかになってきています。 今回は、スルガ…

相続税評価における不動産優遇は縮小していくのか

金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第14回)が開催されました。 今回の議題は高齢社会における金融サービスのあり方です。 議事録は現時点(2018年10月11日)では開示されていませんが、事務局説明資料に筆者が気になる記述がありました。 それ…

信用金庫(信金)がリスクを取れない理由~1/1,250という数字~

東京商工リサーチが「信用金庫の総資金利ざや調査」を発表しました。この調査には信用金庫(信金)の厳しい現状が表れています。 今回は信金の置かれている状況について考察することにしましょう。 「主要151信用金庫 総資金利ざや」調査 まとめ 「主要151信用…