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あおぞら銀行の働き方改革はまともでは?

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日本銀行金融機構局 金融高度化センターは、2018年4月17日、日本銀行本店にて「ITを活用した金融の高度化に関するワークショップ(第3期) (第5回『ワークスタイル変革』)」を開催しました。

このワークショップは、ITあるいはデジタル技術を使って、生産性向上、サービス向上、業務の高度化等を実現しようとする「デジタルトランスフォーメーション」ともいうべき動きを取上げ、金融の最前線でIT活用に取り組んでいる実務家および専門家と議論する場となっています。

今回は、日銀が開示した第5回のワークスタイル変革で取り上げられたあおぞら銀行の働き方改革について確認していきます。

 
あおぞら銀行の取組み

 

あおぞら銀行の働き方改革への取組みについては、上記ワークショップにて資料が提示されています。

今までの具体的施策は以下の通りとなっています。

  • 全行20時最終退行 2017年1月~
  • フレックスタイム制度・利用者拡大 2016年8月~
  • 在宅・モバイル勤務制度2017年4月~
  • フラッパーゲート (ビルの入館)ログ勤怠管理 2017年8月~
  • 電子文書管理システム 2017年8月~
  • 保存文書60%削減 2015年10月~
  • 新本社フリーアドレス席導入、モバイルPC/iPhone配布 2017年5月~
  • マルチ会議システム 2017年5月~

かなり様々な施策を打ち出してきたのがわかります。

それでは、この施策の中でも特徴的な3点についてさらに見ていきましょう。

 

具体的施策① (全行20時最終退行)

まずは20時までの退行(会社から帰ること)です。

あおぞら銀行の説明は以下の通りです。

  • 原則20時までに退行。
  • 「残業を禁止」するものではなく、必要な残業は、上司と部下が十分にコミュニケーションをとった上で行い「やるときはやる、早く帰る時は帰る」メリハリのある働き方を推進。
  • 19時以降の残業は「直属上司の命令、承認」、20時以降は「担当役員の命令・承認」を必要とする。
  • 20時以降の平均在館率は、約7%(約80名)。

これはなかなか面白い取り組みではないでしょうか。

残業するのに担当役員の承認がいるのであれば、基本的には20時以降は残れないということです。

 

具体的施策② (在宅・モバイル勤務)

次に在宅・モバイル勤務です。 

これは画期的です。

銀行とは思えません。

  • 上司が認めれば、誰でも利用可能。(部署、業務内容、利用目的を限定せず)
  • 自宅だけでなく、外出先、出張先、移動中でも利用可能。
  • 銀行へは、週1日出社すれは良い。
  • セキュリティ確保のため、銀行貸与のモバイルPCもしくは、トークン(ワンタイムパスワード生成機)による自宅PCを利用。
  • 前日までの上司の了解を得て、当日は業務開始、終了をメールもしくは電話にて連絡。
  • 深夜・休日勤務は、原則禁止。

 

具体的施策 ③ (フレックスタイム)

こちらの施策は前述のものよりは地味で一般的かもしれません。

それでも利用率はかなりの割合であり、導入しても(雰囲気等で)使えない企業とは随分と異なるようです。

  • 20時最終退行をきっかけに、「フレックスタイム制度」の利用を促進。
  • 非管理職のうち370名(約3割)が利用。
  • 全管理職(約650名)が本制度の枠組みを利用。
  • 原則、前日までに上司の承認を得る。

 

在宅・モバイル勤務制度の利用例

ここで、住宅・モバイル勤務制度の利用例についても確認しましょう。

こちらも有効に活用されていることが分かります。

もちろん同行の中でも優良な例だとは思いますが(同行の従業員が全て同じように認められることはないでしょうが)、素晴らしい事例です。

 

【リテール営業推進部・女性】

  • 6歳と2歳の男の子の育児のために利用。
  • 子供が体調をこわした時に在宅勤務。
  • 電子文書管理システムを利用した文書作成、回覧、決裁。

【事業ファイナンス部・男性】

  • 1歳の長女と、0歳の長男を夫婦で育児するために利用。
  • 毎週、火・水・金の午後を在宅勤務。
  • 法務関連問合せ対応、契約文書の確認。

【管理部・男性】

  • 青森県在住の母親の介護のために利用。
  • 制度の柔軟利用を認め、月5日を東京本店、残りを青森で在宅勤務。
  • 支店の設備障害対応、業務管理CADデータ入力、電話、メールでの指示によるリモート業務。

いかがでしょうか。非常に良い事例といえるのではないでしょうか。

 

アンケートから見える課題

あおぞら銀行は、働き方改革アンケート結果から出てきた課題についても公表しています。

これは、他行にとっも参考となるでしょう。

内容も納得感があります。

  • 「仕事の満足度」が「変わっていない」が多数おり、働き方改革につながる人事制度の利用は道半ば。
  • 業務改革に対する管理職層と非管理職層との意識ギャップがある。
  • 業務時間の短縮により、業務スキル向上・能力開発への時間が削がれたという意見がある(主に総合職)。
  • 業務時間短縮による残業手当減少への不満がある。

 

本社移転にあわせたIT環境の改善

同行は本店移転にあわせてIT環境の改善を行っています。

これも他行にとっては十分に参考となるでしょう。

 

【本社移転前の状況】
①従前から、リモートデスクトップ環境やIP電話システムの導入により、拠点や座席にとらわれないITソリューションを整備していたがレイアウト変更にともなう情報・電源コンセントの移設作業などが発生していた。

②拠点間の移動を考慮した空き席を各部署で用意をしていたので行員数より端末数が多かった。

【本社移転時の推進】
■モバイルPCの拡充、社内無線LANの導入

  • 自席以外でも業務を行うことが多い職員に対してモバイルPCを配布。
  • モバイルPCと社内無線LANを利用することで、PCやLAN配線がない場所でも業務が可能となった。

■ iPhoneの内線·外線共用化

  • 自席以外でも業務を行うことが多い職員に対してiPhoneを配布。
  • iPhoneで内線/外線(個人番号)/外線(携帯番号)を利用できるよう対応。
  • iPhoneが固定電話と同等の機能を有したため、場所の制限がなくなった。

 

【本店移転前の状況】
①出張時利用/災害対策用のモバイルPC、BCP利用を想定した自宅PCからのリモート接続環境は備わっていたが、シンクライアント運用が前提であったため、インターネット接続が安定した場所でしか使うことができなかった。
② iPhoneで内線/個人番号が使えないことで、固定電話無しでは業務が行えなかった。
③紙媒体での申請や承認が必要な社内手続きがあり、社外では行えない業務が存在した。

【本店移転時の推進】
◼️モバイルPCの刷新(①への対応)

  • セキュリティ対策を施し、ファイルダウンロードが可能なモバイルPCに刷新。
  • インターネット接続が安定しない環境でも最低限の業務が可能となった。

■ iPhoneの内線·外線共用化(②への対応)

  • 目的①と同様

■社内続きの電北(③への対応)

  • 電子文書管理システム(ECP)を導入し、社内手続きを電子化。
  • 社外からでも社内手続きが可能となった。

 

まとめ

以上、あおぞら銀行の働き方改革の内容を見てきました。

同行の素晴らしいところは、(この報告が本当ならばですが)施策を立てたり、設備を導入するだけではなく、それを「やりきる」ことです。

施策や設備を導入しても実効性が上がらない事例は数えきれません。

施策をやりきる力があおぞら銀行にはあるということなのかもしれません。