銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

「やりすぎた」スルガ銀行にこれから起こること

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スルガ銀行がスマートデイズ(シェアハウスかぼちゃの馬車運営企業)問題で揺れています。

スルガ銀行はこのスマートデイズの投資主(オーナー)に対する貸出の大部分を担っており、この融資の経緯についても問題視されています。

今回は、スルガ銀行の現状を確認するとともに、今後どのようなことが起きる可能性があるのかについて考察します。

報道内容

スルガ銀行を取り巻く状況、動きについては以下のように報道されています。

各社の記事を引用します。 

スルガ銀行、シェアハウス融資で大幅損失計上へ
2018/05/03 日経新聞

 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を巡る投資トラブルで、スルガ銀行は2018年3月期決算で大幅な損失を計上する方針だ。大半の所有者に合計で1000億円超の建設資金を融資。運営会社の破綻で約束された賃料を得られない所有者が続出し、貸し倒れのリスクが高まった。損失は数百億円規模に膨らむ可能性があり、業績の下振れは避けられない。
 スルガ銀行は現在、18年3月期の連結純利益を前年同期と横ばいの430億円と見込む。同行は、所有者の返済能力に応じ、貸付金利や毎月の返済額を軽減する措置を取りつつ、将来の焦げ付きリスクを1件ごとに精査している。金融庁による緊急の立ち入り検査も受けている。
 シェアハウスでは、土地の取得費用や建設資金を1件あたり平均で1億円前後を会社員らに融資した。シェアハウス融資は総額で1200億円規模とされる。土地・建物など担保の価値は400億円規模とみられる。残る800億円程度の処理が焦点となり、計上する損失は数百億円規模にのぼる可能性がある。
(以下略)

以上のようにスルガ銀行にはかなりの損失が発生することになるものと思われます。 

スルガ銀 返済減免へ シェアハウス破綻 元本は対象外
2018/05/02 日経新聞

 女性専用シェアハウスを巡る投資トラブルで、所有者に建設資金を貸したスルガ銀行が、返済条件の見直しに乗り出した。相手の返済能力に応じて金利や毎月の支払いを大幅に引き下げる異例の提案で、すでに300人程度と合意したもようだ。債務負担を軽減し、運営会社の破綻で約束された賃料収入が得られなくても当面、返済に行き詰まるのを防ぐねらいがある。ただ元本の減免には応じていない。
 シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京・中央)は、投資家がスルガ銀からの融資で建てたハウスを一括で借り上げて転貸するサブリースと呼ぶ業者。立地条件が悪く、十分な入居者を集められないシェアハウスが相次ぎ、今年1月から所有者に約束した賃料の支払いが止まっている。
 同社は破産手続きに移行しており、当初約束した賃料の支払いを再開する見込みはなくなった。賃料収入が止まっている一方、スルガ銀への毎月の返済は消えないため、返済に窮する所有者が続出している。
 このため同行はシェアハウスのほぼ全所有者に個別に接触。返済負担の軽減につながる融資条件の変更を提案している。年3~4%台の従来の金利を下げたり、返済能力に応じて毎月の同行への返済額を給与収入などで支払える範囲まで減らしたりしているようだ。
 スマートデイズの破綻を受け、すでに別の管理会社への切り替えを進めている所有者もいるという。ただしスマート社が当初、保証した家賃収入を得るのは困難とみられる。このため全所有者を対象に条件の見直しを提案。約7割に条件を提示し、見直しで合意したのはすでに所有者の半数近くに達したとみられる。ほかの所有者とも交渉を急ぐ。
(中略)
 スルガ銀は複数の社外弁護士を主体にした社内委員会の調査を踏まえ、役員などは不正行為に関与していないと判断。融資契約も有効とみている。ただ金融庁はこうした書類の改ざんなどの不正に同行の役員が関与していた可能性もあるとみて、緊急の立ち入り検査を実施している。
 かぼちゃの馬車の問題では、融資契約自体の白紙化を求める被害者団体も立ち上がっている。所有者の一部は金利引き下げなどの提案に応じないとみられ、今後どれだけ多くの所有者と交渉をまとめられるかが焦点となる。

上記記事ではスルガ銀行がかぼちゃの場所のオーナーと融資条件の変更を約定もしくは交渉していることが分かります。 

スルガ銀、11営業拠点で不正見逃し 融資の資料改ざん

5/5(土) 朝日新聞 

シェアハウス投資などへのスルガ銀行(静岡県沼津市)の融資で資料改ざんが相次ぎ見つかった問題で、改ざんされた資料をもとにした融資が同行の11支店・出張所で行われていたことが、朝日新聞の取材でわかった。銀行側は通帳原本などの確認を行員に求めていたが、広範囲にわたって多数の不正が見逃されたことになる。スルガ銀は不正には関与していないとしているが、金融庁の検査などで不正の原因がどこまで解明されるかが焦点だ。

 シェアハウス投資では、少なくとも5業者が昨年以降に約束した賃料をオーナーに払わなくなった。5業者すべての物件で通帳コピーなどが改ざんされ、貯蓄や年収が水増しされた資料をもとに首都圏にある同行の7支店・出張所が融資を実行した。

 約700人の顧客を集めて倒産したスマートデイズ(東京)の物件は、横浜東口支店(横浜市)の取り扱いが多い。数十~100人の顧客を集めたほかの業者の物件は渋谷、二子玉川(いずれも東京)など特定の支店に集中している。

 中古1棟マンションへの投資では、少なくとも4業者が売却・仲介した物件で同様の不正があった。都内のある業者は十数人分の通帳コピーを改ざんし、新宿(東京)や仙台など6支店で融資を受けた。京都支店に出した資料を改ざんしたと証言した業者もいる。

 重複を除くと、同行が都内に置く5支店を含む計11支店・出張所で不正が見逃され、貯蓄や年収が基準に満たない会社員らに過剰な融資が実行された。

以上が直近で報道されたものです。

報道内容のポイントは以下の点となります。

  • スルガ銀行のスマートデイズ・かぼちゃの馬車関連融資額は1,200億円規模
  • かぼちゃの馬車関連の土地建物の担保価値は400億円程度
  • スルガ銀行は、かぼちゃの馬車のオーナーと返済条件の見直しを実施中
  • 方法は貸付金利の変更もしくは返済額の変更であり、元本の減額には応じず
  • すでに300名程度のオーナーとは合意が成立
  • シェアハウス投資関連融資(スマートデイズのみならず他業者含む)ではスルガ銀行の11支店・出張所で改ざんされた融資資料で貸出が行われていたことが判明

では以上の状況を踏まえ、スルガ銀行に今後どのようなことが起きるのかについて想定していきましょう。

貸出に関する損失計上

まず、スルガ銀行はかぼちゃの馬車のオーナーである借入人に対して貸出条件の変更を提示して、交渉をしています。

スマートデイズが破たんした以上、借入人は投資物件から想定される賃料が得られていません。

そのため、自己資金も収入もあまりない借入人=投資家にとっては、スルガ銀行への金利支払、元本返済が当初の約定通りにできないことが問題となっています。

そのため、スルガ銀行は借入人に対して「払えるであろう」貸出条件の変更を提示しているものと推察されます。

これは借入人のためだけではありません。

スルガ銀行のためにもなります。

なぜならば、借入人が返済ができない場合には破産等の法的手続きをすることになります。借入人にとっては厳しいことにはなりますが、法的手続きが終われば債務は免除(今後は返済不要)となるでしょう。

この法的手続きで銀行が返済を受けられる金額と比較して、徐々にでも長期間で返済をしてもらった方が「回収総額」が多くなれば、銀行は一回当たりの返済額を減額(約定金利の引き下げによる支払利息減額含む)し、長期で貸出金を返済してもらった方が有利となります。

言葉は非常に悪いのですが「生かさず殺さず」ということです。

貸出条件を変更する場合、通常、銀行は債務者区分(借入人の信用力の区分け)を変更することになります。

債務者区分とは、銀行が融資先ごとに判定している区分で、企業や個人の財務状況と、融資の返済状況によって決められます。実際の判定は、金融庁の金融検査マニュアルに基づきます。

債務者区分は、次の五つの区分に分けられます。

1.正常先
2.要注意先
3.破綻懸念先
4.実質破綻先
5.破綻先

また「2.要注意先」は「その他要注意先」と「要管理先」に分かれています。 債務者区分は、下の区分になるほど、悪い状況の区分ということになります。

以下、債務者区分の定義を見てみましょう。

 

<債務者区分の定義>

1.正常先

業況が良好であり、財務内容に特段の問題もなく、延滞もない企業・個人のことです。

2.要注意先

要注意先は、その他要注意先と、要管理先、に分けられます。
要注意先とは、業況不調で財務内容に問題がある、もしくは融資に延滞がある企業のことを言います。
要注意先の中でも、特に融資の全部または一部が要管理債権である企業は要管理先となります。

ちなみに要管理債権とは、3ヶ月以上の延滞となっている融資、もしくは貸出条件緩和債権である融資のことをいいます。

貸出条件緩和債権とは、債務者の経営再建または支援を図ることを目的として、金利の減額や免除、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄などを行った融資のことです。

3.破綻懸念先

経営難にあり、改善の状況になく、長期延滞の融資がある企業・個人のことです。

4.実質破綻先

法的・形式的には経営破綻の事実は発生していないが、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる企業のことをいいます。

5.破綻先

破産などの法的手続きが開始されていたり、手形の不渡りにより取引停止処分となっている企業・個人のことです。

 

今回のかぼちゃの馬車のオーナー=借入人は、「債務者の経営再建または支援を図ることを目的として、金利の減額や免除、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄などを行った融資」である貸出条件緩和債権先=要管理先となるのが通常だと思われます。

では、かぼちゃの馬車のオーナー向け貸出債権が貸出条件緩和債権となった場合、スルガ銀行にはどの程度の損失が発生するのでしょうか。

貸出条件緩和債権についての貸倒引当(前もって損失に備えて積んでおく会計上のバッファー)は過去実績等を参照しながら今後の貸倒発生に伴う予想損失率により算出・計上されます。

現時点のスルガ銀行の引当状況は以下となります。

 

<スルガ銀行の引当状況(2017年3末時点)>

  • スルガ銀行全体の要管理債権(≒貸出条件緩和債権)残高64億円、引当率9.80%(無担保部分への引当率)
  • 同行全体の危険債権(破綻懸念先宛)残高24億円、引当率31.42%(無担保部分への引当率)
  • 同行全体の破産更生債権及びこれらに準ずる債権(実質破綻先、破綻先宛)残高71億円、引当率100%(無担保部分への引当率)

 

今回のかぼちゃの馬車にかかる貸出の場合、債権総額は1,200億円程度、担保価値は400億円程度と報道されています。

この数値を前提とすると、1,200億円ー400億円=800億円が担保等で保全されていない貸出債権となります。

この非保全部分について、今までであれば約10%程度の引当をスルガ銀行は行ってきました。

すなわち、今までの過去の貸倒引当のやり方であれば800億円 × 10%=80億円程度を新たな引当金(=損失)として計上することが考えられます。

これが損失発生額として想定される最低ラインでしょう。

本件についてはスルガ銀行が個別貸出債権毎に損失額を計算することにはなりますが、かなり無理をして借入を行っていた(=全く借金を返す当てがない)投資主も多くいると想定されます。

よって、今回のかぼちゃの馬車オーナー向け債権が、全て危険債権(破綻懸念先)へと分類されると800億円 × 30%=240億円程度の引当損失が発生します。

筆者としては、この額がスルガ銀行が損失計上する最大値ではないかと想定しています。(もちろん保守的にさらなる損失計上を行う可能性もあるでしょうが)

この損失額は、最大値でもスルガ銀行の2018年3月期の予想最終損益430億円の範囲内となっており、スルガ銀行への損益インパクトは限定的です。

法人としての銀行の責任

 

法人としての銀行の責任は通常は問われることはないでしょう。

借入人が借りたお金をどのように使おうが銀行に責任はないのが通常なのです。

しかし、スマートデイズの「かぼちゃの馬車」の問題は、お金を借りたオーナーに責任があり、スルガ銀行には本当に責任がないのでしょうか。

報道によれば、借入人の資力を証明する(=お金を借りる)ために通帳のコピーに記載されている預金残高が改竄されたり、といった問題があったと報道されています。(ただし、これにスルガ銀行の貸出担当者が関与していたかは現時点でも分かりません。)

また、ずさんな運営をしてきたスマートデイズの問題をスルガ銀行が知っていたならば、収益を生まない可能性の高い資産にオーナーが投資することを銀行が認めていたのですから、銀行側にも責任があるのではないでしょうか。

銀行側は投資が失敗し、貸出金の返済が滞る可能性があることを認識しながら貸出を行ったのではないでしょうか。

それなら返済を猶予するどころか、債務自体を免除するのは当たり前といえるのではないでしょうか。

このような疑問を抱く方は少なくないと思います。

では、実際に銀行の貸し手責任はどうなのでしょうか。

以下でみていきましょう。

貸し手責任(=Lender Liabiltty)は、融資の交渉~回収までの全ての過程において、融資先(企業・個人等)から銀行に対して想定される請求に対し、「融資側が負う可能性のある責任」といえるでしょう。

例えば、融資先の経営内容・事業計画を融資側が把握し、介入する事等による法的責任という考え方もできます。また、銀行が融資を約束したのに撤回したことから会社が倒産したというのも場合によっては貸し手責任(信義則違反)として借主が法的に保護される可能性はあるでしょう。

この貸し手責任の法的な根拠としては、不法行為・債務不履行・信義則違反等によるそれぞれの責任と考えられています。ただし、あくまで社会的責任ではなく法的責任を指します。

統一された法律がないため、日本においては、明確に「これが貸し手責任」といえるような定義は難しいかもしれません。

裁判例でも貸し手責任は簡単には認められていません。

以下のリンク先には様々な事例がありますが、銀行側に責任が認められるのは高いハードルがあることが分かると思います。
http://www.retio.or.jp/case_search/search_result.php?id=94

一方で銀行の貸し手責任が認められることもあります。

銀行の貸し手責任が認められた裁判例で有名なのは「最一小判平成18年6月12日」という判例でしょう。

この判例は、建築会社を紹介し収益物件の建築を銀行が提案した事案です。
簡単に以下事例を挙げます。

建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例

建築会社の担当者と共に顧客に対し、融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後に、その敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を説明した銀行の担当者に、上記計画には建築基準法にかかわる問題があることについての説明義務違反等がないとした原審の判断に「違法」があるとされた事例

出典 裁判所裁判例ホームページ
最一小判平成18年6月12日 裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33185

この裁判では、一審判決で大阪地裁は銀行と建築会社共に説明義務違反を認定し、請求額の約1割の損害賠償を命じましたが、控訴審判決で大阪高裁は両者について説明義務違反の主張を採用せず、顧客側は最高裁に上告をしました。

最高裁は、本事案において銀行には、収益物件の底地に関する建築基準法上の問題や隣地の売却可能性を調査し、顧客に説明すべき信義則上の義務を認める余地がありうる、として、控訴審判決を破棄差し戻しました。その判決の概要は次のとおりです。

ここでは法律事務所の解説記事を引用いたします。

一般には融資の返済計画が具体的に実現可能かは借受人が検討すべき事柄であり、本件でも、銀行担当者が隣地の売却可能性について調査、説明すべき義務が当然にあるわけではない。
しかし、本件で銀行担当者は顧客に対し、土地の有効利用を図ることを提案して建築会社を紹介した。のみならず、収益物件に関する経営企画書や投資プランを作成し、建築会社担当者と共にその内容を説明した。顧客はその説明によって、返済可能な融資だと考えて、これを受けた。しかも、顧客の主張によれば、銀行担当者は隣地の売却は確実に実現させると述べた、ということになっている。
こういった特段の事情があれば、銀行には信義則上の調査、説明義務があったと認める余地がある、と結論づけました。
銀行と顧客の間では金銭消費貸借契約があるだけで、顧客が借りたお金を返す義務を負うだけ、顧客がその金をどう使うかは銀行は知らない(少なくとも法的責任の点で)というのが原則と考えられます。
ところが、銀行はバブル期に融資を増やすため、投資や相続税対策として不動産の購入、建築を顧客に紹介、提案することが多くありました。その提案の中に事実と異なる説明をしたり、尽くしておくべき説明を尽くしていなかったりした場合には、銀行の「説明義務違反」を認定して、相当額の賠償を命じることがありうるとしたのが本判例です。この「説明義務」は金銭消費貸借上の貸し手側の「付随義務」であるとの構成が可能です。
同種の問題に関する判例が近時散見され、このことは近時の経済状況においても十分起こりうる話です。

出典 御池総合法律事務所 御池ライブラリー(ホームページ掲載)
http://www.oike-law.gr.jp/wp-content/uploads/oike25.pdf

本判決は、単に建築会社を紹介した、弁済計画を立てたというだけでは、金融機関に弁済計画の破綻に伴う調査・説明義務違反を認めていません。

本判決が認定した特段の事情のような、金融機関の積極的関与、これによる借主の信用(詐欺における因果関係と同視できるかといえるでしょう)が重要な要素となるといえます。

以上が銀行の貸し手責任の認められた事例です。

すなわち、一般的なアパート建築請負業者を紹介しただけのようなアパートローン案件では法的には貸し手責任を認められる可能性は低いといえます。

今回の事案は、銀行が建築業者を紹介したわけではありません。

しかし、銀行が貸出をする際には、サブリース業者(=スマートデイズ等)および担保物件の調査はします。また、貸出期間中は物件の稼働率(入居率)の調査等も行うことが普通でしょう。

したがって、スマートデイズが詐欺的なサブリース業者であることをスルガ銀行が認識していたのであれば、何らかの貸し手責任が認められる可能性はあるかもしれません。

なお、朝日新聞の報道によると「計11支店・出張所で不正が見逃され、貯蓄や年収が基準に満たない会社員らに過剰な融資が実行された」とされています。

この報道が正しければ、スルガ銀行は「組織的に業者が行う融資書類の改ざんを見逃していた」ことになります。

スルガ銀行の本部は融資書類(借入人の預金通帳等)の原本を確認するルールとしていたと報道されていますから、営業現場が無視していたことになります。

11支店がルールをそろって無視していたという事実、もしくは11の支店がそろって同様の手口で詐欺にあったという事実については、もう少し検証が必要でしょう。

普通に考えれば、これは組織的なものとしか考えられません。

スルガ銀行側のアドバイスがなければこのような事象は考えにくいのではないかと筆者は考えます。

ただし、スルガ銀行が組織的に行内のルールを無視して、貸出を行っていたと認定されたとしても、貸出人としての責任を道義的ではなく法的に問われることは前述の通り難しいでしょう。

単純に損失が起こる可能性を認識しながら、組織的に貸出をしただけです。自ら望んで損失可能性の高い取引をしただけなのです。

なお、融資書類の改ざんは、仲介業者側では詐欺罪が成立します。そして、スルガ銀行の行員が関与しているのであれば、行員個人にとっては背任罪が成立する可能性があります。

株主代表訴訟

法的には法人としての責任を問われる可能性が極めて低いスルガ銀行ですが、経営者には株主から責任を追及される可能性があります。

スルガ銀行の経営者(頭取や取締役等)には、 スルガ銀行が組織として損失発生可能性が高い取引にのめり込まないように事前にルール等を整備しておく義務があります。

これは株主の利益を守るためです。

そして、取締役が職務の懈怠など違法な行為をなし、会社に損害を与えた場合には、「会社はその取締役に対し」損害賠償の請求をできます(会社法423条)。

しかし、実際に会社が損害賠償を請求するためには取締役会の意思決定が必要です。取締役同士あるいは取締役と監査役の馴れ合いによってその取締役に対して会社が責任を追及しないことがあり、その場合には会社=会社のオーナーである株主が損害を被ることになります。

このような場合に備えて、株主が直接会社を代表して取締役に対し、会社が被った損害を賠償するよう訴えを提起することを認めたのが株主代表訴訟の制度です(会社法847条)。

よって、スルガ銀行の今回の一連の問題が「組織的」とされた場合には、経営陣は株主代表訴訟によって損害賠償責任を負わされる可能性があります。

なお、株主代表訴訟は、株主が直接取締役から金銭等の給付を受けるための制度ではなく、会社のために取締役に対して会社の損害の回復を求めるための制度です。(株主にとっては直接の救済措置はありません)

所見

以上、スルガ銀行に今後起きることについて考察してきました。

数字の面では、スマートデイズ等サブリース業者破綻に伴う損失は、スルガ銀行の屋台骨を揺るがすことはありません。

単純にかなりの損失が発生するだけです。

会社としてのスルガ銀行が法的な責任を問われる可能性は低いでしょう。

道義的な責任はともかく、貸し手としての責任を問われることは難しいのが実情です。

また、かぼちゃの馬車のオーナーに対して、すばやく貸出条件の変更を申し出て、合意に至っていることは非常にうまい対応だと感じます。

スルガ銀行が強硬姿勢をみせ、オーナーを大量に破産させた場合には、社会問題化したでしょう。また元本の減額(借金の減額)を行うことも避けられます。

貸出条件変更の素早い合意はこの社会問題化を避ける良い手だったと思われます。

一方で経営陣は相応の責任を問われる可能性があります。

まず、多額の損失を計上した責任をとって、トップ交代の可能性があります。

また、詐欺に引っかからない(もしくは現場の従業員が詐欺を見過ごさないような)仕組み等を事前に作らなかった責任を追及され、役員個人が民事的な責任を負う可能性はあります。

そして、最も問題なのは、スルガ銀行の融資姿勢が変わることです。

スルガ銀行の強みはスピードと他行が貸さないような物件への融資です。その代わりに他行比高い金利を得ているのです。

今回の一件で姿勢が変わったとすればスルガ銀行の強みは完全に失われます。(このビジネスモデルが良いかは筆者にも意見はありますが、今回は控えます)

このポイントを外さないように今後の業務運営を考えていくことがスルガ銀行には求められているのではないでしょうか。