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信用金庫の業績動向(2017年3月期の復習)

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(ロゴは信金中金のもの)

このブログでは近時、地方銀行の業績動向について考察してきました。

 

今回は頂戴したコメントにもありましたので、信用金庫の業績について簡単にみていくことにします。

ただし、信用金庫は上場していないこともあり、業績開示が限られます。

そのため、今回考察するのは2017年3月期であることをご容赦ください。

2017年3月期の信用金庫の業績動向

まずは信用金庫(以下信金)全体の業績動向についてみていきます。

以下の数値は日本銀行の金融システムレポートで掲載されている信金全体の業績です。

 

<2016年度(2017年3月期)業績>
資金利益 15,581億円(前年同期比▲573億円、同▲3.5%)
非資金利益 740億円 (同▲80億円、同▲9.7%)
経費 ▲ 13,360億円(同+88億円、同▲0.7%)
コア業務純益 2,960億円(同▲ 565億円、▲16.0%)
債券関係損益 801億円(同▲38億円、▲4.5%)
当期純利益 2,769億円(同▲553億円、▲16.6%)

 

この数値に対して日銀のレポートでは以下の記載があります。

  • 資金利益は、貸出利鞘の縮小の影響が貸出残高の増加効果を上回っており、減少基調にある。
  • 貸出利鞘は、貸出利回りの低下から引き続き縮小している。貸出利鞘の分布も、全体として、縮小方向へのシフトが続いている。
  • 貸出利率別の貸出残高の推移をみると、低金利の貸出の増加が続いている。
  • 有価証券利鞘は、投資信託や外国証券の残高増加に加え、国内債のデュレーション長期化が拡大方向に寄与したものの、ポートフォリオに占めるウエイトが高い国内債の利回り低下が縮小方向に寄与したことから、全体として横ばい圏内で推移している。
  • 株式関係損益の益超幅は、前年を下回った。一方、債券関係損益の益超幅は、概ね横ばいとなった。
  • 2017 年 3 月末時点のその他有価証券の評価損益をみると、国内債の残高減少等から、債券等を中心に益超幅が縮小した。
  • 金融機関の損失吸収力をみる際の指標の一つである損益分岐点信用コスト率は低下している。これは、仮に経済環境の変化等によって信用コストが増加した場合、基礎的な収益によってカバーできる余地が全体としてみれば縮小していることを意味している。

出典 日本銀行金融システムリポート別冊 2016年度の銀行・信用金庫決算
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb170721.htm/

以上をまとめると、信金では貸出残高は増加しているが貸出金利は低下が続いており貸出収益は低下、有価証券も国内債券の利回りが低下し運用難、債券の含み益も(顕在化してきたことから)低下、一方で経費はあまり下がらず、不況になった場合の余力は低下、といったところでしょう。

日銀のレポートを読む限りでは信金の業況は苦戦が続いていることは間違いありません。

良いところはないといって良いでしょう。

それでは、もう少し詳細に信金の業績等についてみていきましょう。

統計データによる信金の状況確認

信金全体のデータとしては、全国信用金庫概況・統計(信金中金 地域・中小企業研究所)が最も詳細データまでカバーされています。

そこで、当該統計データの中からポイントとなるデータを抜粋していきます。

  • 2016年度末の店舗数(本店、支店、出張所の合計)は、前期比18店舗、0.2%減少の7,361店舗となった。ピークであった1998年度末の8,673店舗から1,312店舗、15.1%減少し、18年連続の減少となった。
  • 2016年度末の常勤役職員数は、6年連続で減少し、前期比841人、0.7%減少の10万9,587人となった。ピークの1994年度末(16万293人)からの減少数は5万706人、減少率は31.6%で、11万人割れは1971年度末以来の水準である。
  • 2016年度末の貸出金残高は、前期比1兆8,473億円、2.7%増の69兆1,675億円となった。2016年度中は前年度と同様に前年同月比2%台の伸び率で堅調に推移した。
  • 科目別に見ると、貸出金の約9割を占める証書貸付が前期比3.1%増の61兆8,003億円と6年連続の増加になった。不動産業向けや住宅ローン、建設業向けが増加を主導した。信用金庫別では、前期比増加した信用金庫が205金庫と、前期(199金庫)を上回った。※筆者註 信金は全体で264金庫あり大半の信金の貸出残高は増加している状況
  • 2016年度末の預貸率(預金に譲渡性預金を含まない。)は、前期比0.2ポイント上昇50.1%となり、2014年3月以来となる50%台を回復した。
  • 2016年度末の企業向け貸出は、前期比2.8%増の43兆9,392億円となり、4年連続の増加となった。
  • 業種別の増減状況をみると、不動産業(5.4%増)、運輸業、郵便業(4.2%増)、医療・福祉(2.8%増)が前年度より伸び率を高めた。
  • 前年度は伸び率が減少した建設業(2.6%増)、小売業(0.2%増)は増加に転じた。一方、製造業(1.1%減)、卸売業(1.1%減)、生活関連サービス(0.3%減)は減少が続いた。
  • 信用金庫別の企業向け貸出金残高の増減状況をみると、前期比増加が183金庫、減少が81金庫となり、増加金庫数は前年度(159金庫)を上回った。
  • 2016年度末の個人向け貸出は、前期比5,007億円、2.5%増の19兆8,409億円となり、5年連続で前期を上回った。
  • 個人向け貸出の内訳を見ると、8割以上を占める住宅ローンは、前期比4,211億円、2.5%増と、低水準のローン金利などを背景に残高を伸ばした。カードローン等は、前期比222億円、3.7%増の6,083億円となった。
  • 信用金庫別の個人向け貸出金残高の増減状況は、前期比増加が193金庫、減少は70金庫、横這いは1金庫となり、増加金庫数は前年度(175金庫)を上回った。
  • 2016年度末の余資運用資産残高は、前期比1兆5,892億円、2.0 %増の79兆4,539億円となり、増加は2009年度以降8年連続となった。
  • 科目別残高の構成比は、有価証券が53.6%と最も高く、預け金(筆者註 信金は信金中金へ高い利回りで資金を預けることが可能)の44.0%、現金の1.8%が続く。有価証券と預け金の合計の構成比は97.7%となり、引き続き余資運用資産のほとんどを占めている。
  • 科目別増減状況をみると、残高の53.6%を占める有価証券が、前期比6,230億円、1.4%減となり、寄与率は39.2%のマイナスとなった。預け金は前期比2兆2,578億円、6.8%増となり、前年度(4.0%増)の伸びを上回った。
  • うち、信金中金預け金は、1兆9,869億円、7.5%増と前年度(7.4%増)並みの増加率となった。
  • 余資運用資産のうち有価証券の内訳について、2016年度末の構成比をみると、高い順に社債(38.1%)、地方債(21.6%)、国債(20.2%)、外国証券(9.3%)、投資信託(8.3%)、株式(2.0%)となった。前年度の構成比と比較すると、投資信託が2.5ポイント高まった。一方、国債が1.3ポイント、社債が1.4ポイント、それぞれ低下した。また、地方債の構成比(21.6%)が国債の構成比(20.2%)を上回った状態が続いている。
  • 有価証券種類別に残高の増減をみると、投資信託が前期比9,908億円、38.8%増と大幅に増加した一方、国債は前期比6,819億円、7.3%減となり、前年度に引き続き減少した。社債は前期比8,417億円、4.9%減となった。社債の内訳では、前年度に引き続いて、金融債が減少したのに加え、公社公団債も減少に転じた。
  • これらの結果、業務純益は、4年連続で減少して前期比573億円、13.0%減の3,817億円となった。本業での収益を示すコア業務純益は、同570億円、16.0%減の2,974億円となり、10年連続の減少となった。
  • 預金貸出金利鞘は、貸出金利回りの低下から、前期比0.07ポイント縮小して0.65%となった。

出典 全国信用金庫概況・統計(信金中金 地域・中小企業研究所)
http://www.scbri.jp/gaikyou16.htm

以上が信金中金の研究所が開示している信金全体の業績動向です。

信金の2017年3月期業績まとめ

筆者の信金業績についての評価は以下の通りです。

  • 信金の貸出残高は地銀同様に増加しているものの、中身は不動産業や住宅ローンが主であり、今後は金融庁にストップをかけられかねない分野(増加しているカードローンも同様)
  • 地域では製造業含め資金需要は減少しており賃貸アパート等収益不動産投資が一巡した場合には、信金の地元では資金需要下落が加速する可能性大
  • 貸出残高が増加しているにもかかわらず貸出金利および利鞘は低下を続けており収益性低下基調継続
  • 貸出ができないため有価証券投資を行わなくてはならないが利回りが確保できる投資先があまりないため、「決算を作る」ことが可能な投資信託への投資に傾注
  • それでも運用をさばききれず、結果として無リスクの信金中金への預け金が増加
  • この投資行動は結果として信金の運用能力を向上させず信金中金依存を深めるため信金にとっては中長期的にみて良い行動ではない
  • 信金が取ることができる選択肢は限られており、まずは早急な経費削減、すなわちリストラが必要(店舗も役職員数もピーク時に比べて大幅減だが全く足りず)

以上が筆者の評価となります。

2018年3月期についても業績発表を待ちたいところですが、更なる苦戦は免れないと思われます。

信金は地銀以上に抜本的な対策が必要なのですが、統合のメリットも地銀よりは少ないと想定され、打つ手が限られると筆者は想定しています。