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第二地銀の中間決算動向~第一地銀からは一周遅れ~

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第二地方銀行協会(略称第二地銀協)の会員である第二地方銀行(41行)の中間決算の概要が、第二地銀協から発表されています。

前回の記事では第一地銀が会員となっている地銀協(64行)の決算について考察しました。

今回は、第二地銀協の決算について考察します。

第二地方銀行とは

第二地方銀行(以下第二地銀)とは、第二地方銀行協会の会員であり、金融庁の「免許・登録業者一覧」において「地域銀行 / 第2地方銀行」とされた銀行です。

第二地銀協の定款には以下のように会員を定義しています。

この協会の会員は、平成元年2月1日以降、金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和43年法律第86号)第6条第5項の規定に基づいて銀行法により免許を受けたとみなされた銀行及び会員から営業を譲り受けることを目的として新たに免許を受けた銀行であって、主たる営業基盤が地方的なもののうち、次条の承認を得たものとする。

出典 一般社団法人 第二地方銀行協会定款第5条

第二地銀は規模の大きい第一地銀とは異なり、相互銀行が前身です。相互銀行は庶民金融機関であった無尽会社から転換したものであり、いわゆる中小の金融機関でした。

相互銀行から普通銀行に転換した際に、全国相互銀行協会も第二地方銀行協会に改称し、今に至ります。

第二地銀協会員行の決算概要

では早速、第二地銀協が発表した第二地銀の決算概要をみていきましょう。

以下、第二地銀協の発表文を引用します。

 

1.損益概況
会員行の平成 29 年度中間決算は、業務純益、経常利益および中間純利益のいずれも減益となった。
業務純益は、資金利益および国債等債券関係損益の減少等により、1,017 億円と前年同期比△203 億円、△16.6%の減益となった。
経常利益は、個別貸倒引当金繰入額が減少および株式等関係益が増加したものの、業務純益の減益を受け、1,210 億円と同△74 億円、△5.8%の減益となった。
中間純利益は、895 億円と同△59 億円、△6.2%の減益となった。
因みに、コア業務純益は、961 億円と同△64 億円、△6.2%の減益となった。

2.業務純益の状況
⑴ 資金利益(4,087 億円、前年同期比△131 億円、△3.1%)
資金利益は、前年同期比△131 億円、△3.1%減少して、4,087 億円となった。
この内訳をみると、預貸金収支は、貸出金が増加したものの、預貸金利鞘の縮小により、同△85 億円、△2.6%減少して、3,166 億円となった。
また、有価証券利息配当金は、同△36 億円、△3.7%減少して、940 億円となった。
⑵ 役務取引等利益(329 億円、同△10 億円、△2.9%)
役務取引等利益は、投信窓販業務手数料および預金・貸出金業務手数料等が増加したものの、保険窓販業務手数料等の減少により、同△10 億円、△2.9%減少して、329 億円となった。
⑶ その他業務利益(105 億円、同△159 億円、△60.2%)
その他業務利益は、国債等債券関係益等の減少により、同△159 億円、 △60.2%減少して、105 億円となった。
出典 第二地銀協ホームページhttp://www.dainichiginkyo.or.jp/jp/about/statistical/settlement/

 

以上が第二地銀協の発表内容の抜粋です。

第二地銀が総じて業績が厳しいことがみてとれます。

以降の項目では、第一地銀との比較を行うことにより、さらに第二地銀の業況についてみていきます。

 (第一)地銀協との業績見通し比較

まずは、地銀協と第二地銀協との業績見通し比較をみてみましょう。

経常利益ベースでみると2018年3月期(通期)の決算見通しでは、地銀協ベース(通期予想を公表している63行)では増益23行(36.5%)、減益40行(63.5%) となっているのに対して、第二地銀協ベース(通期予想を公表している40行)では、増益10行(25%)、減益予想29行(72.5%)、横這い1行(2.5%)となっており、第二地銀協の方が減益となる割合が高くなっています。
全体としては、第二地銀の方が業績見通しが厳しいということがいえます。

地銀協と第二地銀協ベースでの業績比較

両協会の会員行の中間決算業績について、主要項目を以下比較します。

  • 資金利益は、地銀協が14,710億円(前年同期比▲0.0%)、第二地銀協が4,087億円(同▲3.1%)
  • 国際等債権関係損益は、地銀協が▲60億円(同▲638億円、赤字転落)、第二地銀協が41億円(同▲175億円、▲81.0%)
  • 業務純益が、地銀協が5,316億円(同▲13.9%)、第二地銀協が1,017億円(同▲16.6%)
  • 貸出金は、地銀協が1,938,048億円(同+3.7%)、第二地銀協が514,499億円(同+3.3%)
  • 有価証券は、地銀協が706,517億円(同▲6.2%),第二地銀協が157,095億円(同▲3.8%)
  • 有価証券のうち、株式は、地銀協が31,868億円(同▲1.6%)、第二地銀協が11,762億円(同+16.9%)
  • 有価証券のうち、外国証券は、地銀協が110,340億円(同▲7.9%)、第二地銀協が20,856億円(同+7.2%)
  • 有価証券のうち、その他の有価証券は、地銀協が76,377億円(同+15.8%)、第二地銀協が21,290億円(同+0.4%)
  • 預貸金利鞘は、地銀協が0.26% (同▲0.02%)、第二地銀協が0.25% (同▲0.03%)
  • コア業務粗利益経費率(=経費÷ (業務粗利益-国際等債権関係損益) x 100)は、地銀協が68.2%、第二地銀協が78.5%

以上をみると第二地銀協の会員行の動向は下記のようになります。

  • 地銀協会員行と比較し、第二地銀協会員行は本業収益の低下幅が大
  • 両協会の会員行とも国際等債権関係損益で決算を作ることはせず(もしくは限界)
  • 貸出金の増加率でも地銀協に第二地銀協は劣後
  • 株式については、地銀協が削減開始したのに対して、第二地銀協は削減せず
  • 外国証券投資については、金融庁からの意向、指摘もあり地銀協が削減開始したのに対して、第二地銀協は投資積み増し
  • その他有価証券(投資信託等への投資)については、地銀協が投資積み増し、第二地銀協は横這い
  • 預貸金利鞘は、規模が大きく優良取引が多い地銀協の方が、第二地銀協よりも利鞘確保(通常は規模が小さく、財務内容が劣る取引先から厚い利鞘を獲得するため第二地銀の方が厚い利鞘を確保しなければ経営が成り立たず)
  • 結果、コア業務粗利益ベースの経費率については、圧倒的に(第一)地銀協会員行が優位

以上を纏めると、地銀協会員行と比べて、第二地銀協の会員行の動向は一周遅れといえる
状況です。

売上も上がらず、金利リスク上昇等への対応も進まず、経費削減も進まず、といった状況にあり、今後、監督官庁である金融庁等から問題視される(もしくは既にされている)可能性があります。

まだ相対的に余裕のある(第一)地銀よりも第二地銀の方が、先に抜本的な対策が必要になるということです。