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メガバンクの2017年9月中間決算での実力をはかるポイントは有価証券の含み損益

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メガバンクの中間決算が出そろいました。

各メガバンクからは、機械化投資による業務量削減、実際の人員数削減、店舗削減等の話題も出た中間決算発表となりました。

今回のメガバンクの中間決算で筆者が最も注目すべきだと認識しているのは「有価証券の含み損益」です。

今回はメガバンクの実力を測る意味でも有価証券の含み損益に焦点を当てて考察します。

有価証券の含み損益

銀行の決算においても有価証券の含み損益は開示されています。

筆者が銀行決算で注目しているのは「その他有価証券」の含み損益です。

まず、その他有価証券がどのようなものかについて以下簡単におさらいをしておきます。新日本監査法人のホームページから引用します。

有価証券に対する投資活動の成果は「保有目的」によって異なると考えられるため、金融商品会計では有価証券を保有目的に応じて(1)売買目的有価証券(2)満期保有目的の債券(3)子会社及び関連会社株式(4)その他有価証券に分類し、保有目的ごとに異なる評価をします。

例えば期末時点の評価について、保有する有価証券の時価が上昇した場合、それを短期売買目的で保有しているのであれば、時価上昇分を利益に計上することが適切ですが、長期的な保有を意図したものであれば、時価が上昇しただけでは利益の計上には至らないことになります。つまり、会計上では一定期間の損益計算を適切に行うことや、ある一定時点の財産の価値を貸借対照表で表すことが重視されるため、「保有目的」による分類が採用されているのです。

満期保有目的の債券は満期まで保有することを目的としているので、利息の受け取りと満期時の償還額の受け取りが投資の成果となります。そのため、貸借対照表価額は償却原価法に基づいて算定された価額により計算され、原則として期末で時価評価はされません。

その他有価証券は市場動向によって売却を想定している有価証券や業務提携等の目的で保有する有価証券が含まれ、長期的には売却することが想定されます。そのため、期末で時価評価されるものの、直ちに売却・換金するものではないことから、評価差額はB/Sの純資産の部に計上します。

出典 新日本有限責任監査法人ホームページから該当部分を抜粋

第2回:有価証券の評価|わかりやすい解説シリーズ「金融商品」|新日本有限責任監査法人

銀行の決算で主要な項目となるのは「満期保有目的の有価証券」および「その他有価証券」です。そして、有価証券のほとんどは「その他有価証券」(=いつか売買するかもしれない有価証券)が占めています。

この「その他有価証券」の含み損益は、銀行が顕在化(利益計上)しようとすれば可能なものですので、利益を「作る」ことができる項目になります。

一概には言えないでしょうが、余裕のある銀行は含み益を顕在化させる必要がないので含み益が多く、余裕のない銀行は本業が好調に見せる必要があるため含み益を吐き出しており含み益が少なくなっている傾向にあると筆者は認識しています。

それでは、3メガバンクの「その他有価証券の含み損益」の動向についてみていきましょう。

「その他有価証券」の含み損益の状況 

まずは各メガバンクのその他有価証券の状況を以下記載します。

三菱UFJFG

2017年9月末時点:その他有価証券 547,682億円

その他有価証券の含み損益合計=+36,215億円

うち、株式(国内) +31,116億円

うち、債券(国内) +2,885億円

うち、外国債券 +361億円

うち、その他 +1,852億円

 

含み損益の増減(2017年3月末比較)

株式(国内) +4,765億円

債券(国内) ▲1,106億円

外国債券 +446億円

その他 +720億円 

 

上記の通りMUFGの含み益は3兆円台と巨額です。

臨時損益に反映される株式の含み益を除くと5,099億円の含み益があります。これは本業の利益である業務純益に計上することが可能です。

2017年3月末と比較すると債券の含み益が大幅に落ち込んでいます。これは益出しによるものでしょう。しかし、一方で外国債券やその他(外国株式等)で含み益が1,166億円増加しており、国内債券の含み益落ち込み分をカバーしています。

国内での低金利・マイナス金利に対応し、海外での有価証券運用へシフトし結果を出しているということでしょう。

三井住友FG

2017年9月末時点:その他有価証券 239,118億円

その他有価証券の含み損益合計=+24,077億円

株式(国内)+21,115億円 

債券(国内)+425億円

外国債券 ▲1,005億円

その他 +3,541億円

 

含み損益の増減(2017年3月末比較)

株式(国内)+1,896億円 

債券(国内)▲178億円

外国債券 +100億円

その他 +371億円

 

SMFGでは、その他有価証券の含み益は2.4兆円程度を確保しています。

臨時損益に反映される株式の含み益を除くと2,962億円の含み益があります。これは本業の利益である業務純益に計上することが可能です。

SMFGの決算をみると、国内での債券売却による収益獲得は随分と難しくなってきています。また外国債券への投資もうまくいっていないようです。ただし、「その他」で大きな含み益がありますので、利益計上という観点ではまだ余裕があるとみてよいでしょう。 

みずほFG

2017年9月末時点:その他有価証券 289,316億円

その他有価証券の含み損益合計=+19,883億円

株式(国内)+20,115億円 

債券(国内)▲93億円

外国債券 ▲1,366億円

その他 +1,228億円

 

含み損益の増減(2017年3月末比較)

株式(国内)+1,571億円 

債券(国内)▲304億円

外国債券 +77億円

その他 +349億円

 

みずほFGでは、その他有価証券の含み益は2兆弱を確保しています。

ただし、臨時損益に反映される株式の含み益を除くと債券等の含み損益は▲232億円と含み損となっています。これは本業の利益である業務純益に計上することが可能な含み益がすでに尽きていることを示します

国内での債券の含み損は拡大しており、外国債券も含み損が縮小したとはいえ大幅な含み損があります。その他(外国株式等)は含み益が拡大していますが、決算を作るという観点では厳しい状況にあります。

含み損の状況・推移から見えてくるもの

以上、3メガバンクの「その他有価証券の含み損益」からみる決算動向についてみてきました。

筆者の所見は以下の通りです。

  • MUFGは含み損益の観点からみても余裕があり、国内での債券投資の含み益も多額であり問題なし。また外国債券の含み損益もプラスとなっており、他メガバンクが含み損となっている状況下、おそらく早めに損切りをしていることが推察され、やはり決算に余裕があるからできるものと推察。
  • SMFGは、そもそも債券等有価証券投資にはあまり頼らない決算方針と認識しており、含み損益の動向も無理のない範囲で対応している状況。なお、外国債券での含み損が相応にあり、また「その他」の項目での含み益が多くなっているが、現在の収益力も鑑みると余裕で処理できる水準であり問題なし。
  • みずほFGは問題あり。本業の利益(業務純益)を作ることができる「その他有価証券(株式除く)」の含み益が実質的に枯渇しており、今後の決算運営が苦労するレベル。(ただし、「その他」の含み益は存在するため、「その他」の含み益だけを顕在化させれば業務純益は作れると推察)
  • みずほFGは2017年3月期までの決算で、「決算を良く見せるために」その他有価証券の含み益を使い果たしてしまったといえる状況にあり、今後は有価証券投資に頼らない運営が必要。

以上が筆者の所見です。

みずほFGの苦境が有価証券の含み損益からも見えてきたメガバンクの中間決算だったということです。