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三菱UFJの中間決算は余裕あり

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三菱UFJフィナンシャル・グループの2018年3月期中間決算が発表されました。

詳細は11月21日に発表されるのでしょうが、現段階で開示されている資料をもとに三菱UFJの業績状況について今回は分析することにします。

メガバンクトップの三菱UFJでも本業は厳しいとトップが発言しているようですが、本当のところはどうなのかについてみていくことにします。

三菱UFJ連結の中間決算概要

まずは連結での決算について確認します。

 

連結業務粗利益(一般企業の売上高に相当)20,081億円 前年同期比+387億円
連結業務純益(一般企業の営業利益に相当)7,007億円 前年同期比▲246億円
連結経常利益 8,640億円 前年同期比+691億円
連結純利益 6,269億円 前年同期比+1,364億円

 

以上のように本業の利益である業務純益は減益となったものの、売上高に相当する業務粗利益は増加、経常利益以下も大幅増益となっており、全般的には「好調」な決算状況です。

この数値だけみれば銀行の本業が厳しいといわれても説得力がありません。

それでは三菱UFJFGの本体である三菱東京UFJ銀行の単体決算について以下で確認していきましょう。

三菱東京UFJ銀行単体の中間決算

上記と同様に三菱東京UFJ銀行単体の決算数値を確認します。

 

業務粗利益 9,058億円 前年同期比▲664億円
業務純益 3,379億円 前年同期比▲791億円
経常利益 4,118億円 前年同期比+15億円
中間純利益 2,942億円 前年同期比▲287億円

 

三菱東京UFJ銀行単体では業績が悪化しているのがわかります。

特に売上高・営業利益に相当する業務粗利益と業務純益がともに大幅に減少しています。

これでは経営陣も危機感を覚えるかもしれません。

では、この単体決算についてもう少し詳しくみていきましょう。

三菱東京UFJ銀行「単体」中間決算の分析

まず、一般企業の売上高に相当する業務粗利益の内訳について確認していきます。

以下の数値は前年同期比の数値を記載します。

国内業務粗利益 +182億円

うち、資金利益(貸出・有価証券の金利等含む) ▲181億円
うち、役務取引等利益(手数料収入)▲126億円
うち、特定取引利益(有価証券等のトレーディング等) ▲140億円
うち、その他業務利益 +632億円(そのうち、国債等債券関係損益+459億円

この数値をみると国内では貸出や有価証券での運用から得られる金利収入、手数料収入(これには貸出にする手数料収益も含む)、国内での有価証券等のトレーディングとも不調であり、それを主に国債の関係損益で補ったということになります。

では、海外はどうなっているでしょうか。

国際業務粗利益 ▲847億円

うち、資金利益 ▲373億円
うち、役務取引等利益 +30億円
うち、特定取引利益 ▲420億円
うち、その他業務利益 ▲83億円(そのうち、国債等債券関係損益▲429億円

上記の通り、海外業務はさらに厳しく大幅な落ち込みをみせており、さらに国内では国債等債券関係損益で前年同期比でプラスを計上していたものの、国際では前年同期比で大幅なマイナスとなっています。

なお、この海外業務での苦戦の要因は、現段階では判然としません。グループの貸出残高も堅調ですので、銀行単体の資産を現地法人に統合した等、何らかの本業外の要因が想定されます。

上記の国内・国際の業務粗利益の変動により三菱東京UFJ銀行の中間決算は業務純益が約2割の減益となったのです。

経常利益

業務純益段階では大幅な減益でしたが、経常利益は上述の通り横ばいとなっていました。

この要因についても簡単に触れておきます。

前年同期比でみると以下のような変動状況となっています。

 

与信関係費用(債務者の倒産等) +322億円
貸倒引当金戻入益 +267億円
償却債権取立益(焦げ付いていた貸出金が想定以上に回収できた場合等) +46億円
株式等関係損益(持合株の売却等) +153億円

 

以上のように、臨時損益が計上され前年同期並みの経常利益になっているということです。

中間純利益は減益となっていますが、これは税金面等の会計上の調整の話ですので大きな影響はありません。

有価証券の評価損益

以上損益項目(P/L)をみてきましたが、ここで有価証券の評価損益についても確認します。

銀行は、単純にいえば、有価証券に含み益がある場合、有価証券の売買等である程度の利益を計上(いわゆる決算調整)することができるためです。

 

<その他有価証券の含み損益の前年同期比変動>
株式(国内) +4,037億円
債券(国内) ▲997億円
外国株式 +203億円
外国債券 +264億円
その他 +371億円

 

冒頭に記載している通り、国内の業務粗利益における「国内の国債等債券関係損益」は+459億円となっていました。今回の決算では国内債券の含み益が大幅に減少していますので、ある程度は国内の国債等債券売却により含み益を実現したことが想定されます。

なお、国内株式は持合株式であることが想定されるため簡単には売れませんし、臨時損益に計上されますので業務純益(=本業の利益)とはなりません。 

三菱東京UFJ銀行単体の決算評価

では以上を踏まえると三菱東京UFJ銀行の中間決算はどうだったのでしょうか。

筆者の考えでは、三菱東京UFJ銀行単体の決算が相応に苦戦していることは事実だと考えます。

数字の面では国内で国債等債券売却により益出しをしていること勘案すると、国内外とも収益は厳しいといえるでしょう。

しかし、一方で海外の有価証券(=国内株式・国内債券を除く)は合計で+838億円の含み益が増加しています。この含み益を実現させれば業務純益を横ばいで着地させることも可能だったものと想定されます。

三菱東京UFJ銀行単体では、この中間期で与信関係費用や貸倒引当金戻入益が発生し、進展した株式持合解消による利益計上も考慮すると「無理をして」業務純益を前年同期比横ばいとしなくとも、最終利益は確保できると経営陣は判断したものと筆者は想定しています。

将来の利益を確保するためにあえて海外で有価証券の売買等を控えたのです。そのような意味では、余裕を持った決算着地だったといえるでしょう。

もちろん債券の売買損益等に頼った銀行の決算というのは健全ではないかもしれません。しかし、金利低下が進行してきた日本においては、ほとんどの銀行において、かなり長い期間に渡り債券の売買益(含み益の実現)が銀行決算を支えてきたのです。ただし、金利がマイナスまで低下してしまい低下余地が(現実を踏まえると)ほとんどなくなりましたので、金利低下→債券の含み益増→売却等で実現という流れは今後使えなくなります。

そういう意味では持続可能ではないと言えるかもしれませんが、他のメガバンクGの傘下銀行と比較しても余裕をもった決算とはいえるでしょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループ連結の中間決算評価

以上みてきたように三菱東京UFJ銀行単体では余裕があるとはいえ若干の決算の厳しさはみてとれました。

では三菱UFJFG連結として見た場合はどうでしょうか。

冒頭に示したように、連結ベースでの収益は好調といえます。

連結ベースの営業純益(一般企業の営業利益に相当、上記の業務純益とほぼ同じ)が前期と比べてどのように推移しているかを確認してみましょう。

前期中間時点の営業純益からの変動要因は以下の通りです。

 

リテール(個人分野) +206億円
法人 ▲293億円
国際 +11億円
受託財産(年金等資産の運用) +41億円
市場(有価証券のマーケットでの売買等) ▲399億円
その他 +159億円

 

ここで気になるのは低金利の影響を主因として法人からの収益が低下していると想定されることです。これをカバーすべく個人分野(消費者金融、カード含む)や資産運用分野に注力してきていることがわかります。

市場分野が▲399億円と大幅に減益となっていますが、これは先ほども取り上げたように含み益を顕在させなくても決算が成り立つと経営陣が判断したためでしょう。将来に利益を蓄積したということです。

以上でみていくとメガバンク最大手の三菱UFJであったとしても日銀の低金利政策の悪影響を受けていることは間違いありません。法人分野からの収益が減少しているということは、マイナス金利政策を行ったとしても法人の資金需要は伸びていないということを示しているともいえます。

しかし、人口減少社会においては、国内の収益が厳しくなることは誰しもが分かっていたことです。そのため三菱東京UFJ銀行も海外展開をしてきたのです。

三菱UFJフィナンシャル・グループは北米の中間持株会社を立ち上げ、タイのアユタヤ銀行(Krungsri)を買収する等海外展開を加速してきました。

この資金は、当然ながら三菱東京UFJ銀行が過去に蓄積した利益を使ってきたのです。三菱東京UFJ銀行単体の業績があまり芳しくないからといって、三菱UFJフィナンシャル・グループがダメだということにはなりません。

国内が厳しくなることが想定されることから海外展開を加速し、それは銀行のお金で実施してきたのです。海外の現地法人は「法人」としては異なるかもしれませんが、資金の出所はやはり銀行なのです。

三菱UFJのCFOがネットコンファレンスで三菱東京UFJ銀行の中間純利益がグループの半分以下になったことについて問題がある旨の言及をしていましたが、筆者からみるとそれは「当たり前」だということになります。三菱東京UFJ銀行以外の分野を伸ばすように経営してきたからです。 銀行の資金を使ってきた以上、実態上は銀行の延長線なのです。

そもそも、三菱UFJフィナンシャル・グループは2017年度で合計2,000億円の自社株買いという形で株主還元をしていきます。自社株買いは自己資本の減少させることであり、今後の経営に懸念があるのであれば自社株買いをすることはないでしょう。この点も三菱UFJフィナンシャル・グループが実態上は余裕があると経営陣が考えている証左として指摘できるところでしょう。

以上みてきたように、今回の三菱UFJフィナンシャル・グループの決算は好調でした。三菱東京UFJ銀行単体は若干の苦戦をしていますが、それ自体は経営陣として予想してきていたことでしょうし、買収を行ってきたのも、それに備えるためだともいえるでしょう。

よって、最近の報道にあるように「銀行は非常に業績が厳しく、店舗・人員等でリストラをしなければならない」とみてとれるほどには、三菱UFJの決算内容は悪くなかった、むしろ良かった、と筆者は評価しています。

 

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