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メガバンクの店舗リストラの背景を簡単に解説する

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2017年11月8日の産経新聞ホームページにはみずほフィナンシャルグループが全国の拠点の半数を小型店に切り替える検討に入った旨の記事が掲載されました。

www.sankei.comまた、同日の読売新聞ホームページには三菱東京UFJ銀行が今後5年程度でフルバンク型の店舗を半減させる方向で検討しているとの記事が掲載されました。

www.yomiuri.co.jp

このようなメガバンクの店舗リストラの背景について今回は考察します。

銀行の店舗数推移

まずは日本の銀行等における店舗数の推移をみてみます。

図のデータは2012年3月末までしかありませんが、都市銀行(すなわち現在のメガバンク3行+りそな)は店舗が減少しています。

これは合併が行われ重複店舗の処理が進展したことによるものです。

一方で、地方銀行はメガバンクに比べるとあまり店舗数の減少はみられません。

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図出典 NTT経営研究所ホームページ

一方、全国銀行協会のホームページに掲載されているデータでは2017年3月末の都市銀行の店舗数は、国内で約2,780店となっています。 

近時の都市銀行の店舗推移は、2013年3月末:約2,400店、2014年3月末:約2,400店、2015年3月末:約2,730店、2016年3月末:約2,720店となっており、不良債権処理の時代等を経て都市銀行は店舗を増やしてきたことが分かります。(いずれも全国銀行協会ホームページ掲載の数値)

<2017年3月末:店舗数>

銀 行 名                 店       舗       数
計         国     内 海     外
本支店   出張所   支 店    出張所  
三菱UFJ        824      685       67       33       39
みずほ        558      471       45       25       17
三井住友        975      506     431       18       20
りそな        347      275       72       -       -
埼玉りそな        131      106       25       -       -
都市銀行計      2,835   2,043     640       76       76

平成28年度決算 - 全国銀行協会

この店舗が増えてきた詳細の要因は、各行によって違いがあるかもしれませんが、基本的には収益を稼ぐために店舗を出店していることに変わりありません。

ところが銀行が新規出店を決めた時期と、現在では銀行を取り巻く環境はかなり変わってきています。

足下の経営状況

日銀のマイナス金利政策の影響もあり銀行の業績は苦戦しています。

銀行の本業の収益を表す業務純益(一般の企業の「営業利益」に相当)の推移を示したものが下記の表です。

都市銀行も地方銀行も業績が一気に落ち込んできていることが見て取れます。

                  (単位:億円、%、△印は減)
    業 務 純 益
    金     額 増 減 率
全国銀行 24年度   49,999    △ 0.7
25年度   45,720    △ 8.6
26年度   47,127         3.1
27年度   47,975         1.8
28年度   37,027   △ 22.8
都市銀行 24年度   27,625    △ 1.7
25年度   24,704   △ 10.6
26年度   25,749         4.2
27年度   26,806         4.1
28年度   20,700   △ 22.8
地方銀行 24年度   13,994         2.8
25年度   12,317   △ 12.0
26年度   12,817         4.1
27年度   12,702    △ 0.9
28年度   10,348   △ 18.5
地方銀行Ⅱ 24年度   3,395    △ 1.9
25年度   3,803       12.0
26年度   2,896   △ 23.8
27年度   2,678    △ 7.5
28年度   2,161   △ 19.3

日本におけるキャッシュレス化率

日本における決済に占めるキャッシュレス化比率は18%です(2015年度)。

(日本のクレジット統計 44p)

http://www.j-credit.or.jp/information/statistics/download/toukei_03_h_170630.pdf

他国では韓国が90%、シンガポール56%、フランス31%、ドイツ15%となっており、日本はドイツ並みにキャッシュレス化が進んでいないということになります

なお、当該資料では米国は最終的なキャッシュレス化比率の記載がありませんが、クレジットカード、デビットカード合算で決済全体の4割強を占めていますので、少なくとも日本よりはかなり進んだキャッシュレス社会といえるでしょう。

日本はキャッシュレス化の比率が低く、現金の取り扱い(預金としての受け入れ、振込等)が必要なこともあり、銀行が店舗を好立地に設置し顧客来店誘致をすることは、今まで合理的だったのでしょう。 

しかし、インターネットの更なる普及、フィンテックの発展は間違いなく銀行の現金取扱量を減らすことになります。

メガバンクが店舗削減に乗り出す背景

銀行にとって優良な顧客は高年齢者です。

世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高,負債保有世帯の割合(二人以上の世帯)-2016年-調査によると、40歳以下世帯の貯蓄額は574万円であるのに対して70歳以上は2,446万円となっています。

http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/h28_gai4.pdf

次に、以下は年齢別のインターネット利用率等の図表です。

左上が年齢階層別のインターネット利用率となります。 

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加えて、以下の表はインターネットで購入する際の決済方法について集計されたものです。これをみるとやはりインターネットでの決済はクレジットカードが用いられていることが分かります。

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図表出典 平成28年版 情報通信白書、総務省ホームページ 

以上を総合すると、「銀行の優良顧客は高年齢層であり」「高年齢層はインターネットの利用が少なく店舗に来店する」が、この高年齢層に相続が発生するような時期が到来すると「インターネットの利用者が一気に増加し、キャッシュレス化も進む」ということが想定されます。 

すなわち銀行の強みだった好立地の店舗は、これからは「お荷物」になることが容易に想定されるのです。

これがメガバンクが店舗の整理・統合に乗り出した簡単な説明です。

この状況は地方銀行も変わりありませんので、可能な限り早く店舗の整理を始めた方が良いといえるでしょう。

 

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