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メガバンクの3.2万人リストラ報道について考える②~みずほ銀行の事例~

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前回、メガバンクのリストラ報道について内容を確認した上で、三井住友銀行についての状況を確認・想定しました。

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一方で、みずほ銀行は今後10年で1.9万人の「業務量」を減らすとしています。

今回は、みずほ銀行について前回記事同様に人員数の動向・人件費の動向等考察していきます。

人員数分析

みずほ銀行が不良債権処理から脱却し、人材採用の面でも攻めに転じたのは2006年3月期からといえるでしょう。

数字で見ると以下の通りとなります。なお、以下の数字はすべてみずほ銀行「単体」での数値となります。

〈正社員数〉

2003年3月末:27,209名

2004年3月末:24,998名

2005年3月末:22,733名

2006年3月末:22,970名

2007年3月末:24,412名

2008年3月末:24,890名

2009年3月末:26,045名

2010年3月末:27,090名

わずか数年の間に急激に正社員数が減少し、その後増加したことがわかるでしょう。

みずほ銀行の直近10年程度の人員数についての傾向は、正社員の大幅削減→人員数の逼迫→正社員採用大幅増→みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の合併による人員余剰→臨時従業員(非正規雇用者)での調整→業務量の増加による正社員及び臨時従業員の増加という流れです。

近時の人員数推移は以下の通りとなります。

2012年3月末:正社員27,609名+臨時従業員11,180名

2013年3月末:正社員26,564名+臨時従業員10,559名

2014年3月末:正社員26,250名+臨時従業員8,173名

2015年3月末:正社員26,561名+臨時従業員10,739名

2016年3月末:正社員27,355名+臨時従業員10,909名

2017年3月末:正社員29,848名+臨時従業員数11,372名

どの銀行も法令対応、海外業務拡大等で人員の逼迫感が強いのですが、特にみずほ銀行の人員数の増減は傾向が読みにくいといえます。一見すると全く脈絡なくその場しのぎで採用しているようにみえます。

おそらく、近時はみずほ銀行とみずほコーポレート銀行との合併、ずっと不調に終わっていたシステム統合が影響しているのでしょう

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人件費分析

上記の通りみずほ銀行の人員数は大きく動いてきました。

では人件費はどのようになっているのでしょうか。

従業員数がこの15年間で最も少なかった2005年3月期と直近の2017年3月期の人件費を比べてみましょう。

人件費(正規・非正規従業員合算)=2005年3月期:218,316百万円→2017年3月期:320,341百万円

これは、11年間で人件費は約1.5倍の水準に膨らんでいるということです。

一方で留意すべきなのは、従業員数は2005年3月末:34,725名から2017年3月末:41,220名へと約1.2倍にしかなっていません。

すなわち、人員数の増加が少ない割に一人当たりの人件費が増えているということです。

時系列でみた一人当たりの人件費の推移は以下の通りとなっています。

(なお、人件費は年金等退職給付費用が含まれており、年金の運用がうまくいかず人件費増となっているケースもありますので、一人当たりの賃金を正確に表している訳ではありませんが、傾向値としては参考となります)

2003年3月期:7.9百万円

2005年3月期:6.3百万円

2007年3月期:5.8百万円

2008年3月期:5.4百万円(ボトム)

2009年3月期:6.6百万円(大幅人員数増、急回復)

2010年3月期:7.3百万円

2013年3月期:7.7百万円(みずほ銀、コーポレート銀行合併)

2014年3月期:8.0百万円(上記同様)

2015年3月期:7.8百万円

2016年3月期:7.9百万円

2017年3月期:7.8百万円

みずほ銀行の場合、人件費については一定の範囲内にコントロールしようとしていることが良く分かります。

足下では、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行との合併についても一段落し、次のフェーズへ移行することが可能な状況となっているものと推察されます。

経費に占める人件費と物件費の割合

銀行の人員数・人件費について分析していく際には、総額の営業経費に占める人件費と物件費の割合を比較する観点が外せません。

これは銀行がシステムによってビジネスをしている側面が多い(例:送金手数料)ためです。

経費に占める人件費と物件費の割合は以下の通りで推移しています。

(なお、物件費には店舗賃借料のみならず、システム経費が含まれます

2003年3月期:人件費34.5%、物件費60.1%

2005年3月期:人件費28.8%、物件費64.7%

2008年3月期:人件費26.0%、物件費68.0%(人件費の比率最低)

2009年3月期:人件費30.6%、物件費64.0%

2010年3月期:人件費34.9%、物件費59.9%

2012年3月期:人件費35.5%、物件費59.3%

2013年3月期:人件費37.2%、物件費53.8%(2行合併)

2014年3月期:人件費34.9%、物件費58.2%

2015年3月期:人件費34.8%、物件費59.0%

2016年3月期:人件費36.2%、物件費57.6%

2017年3月期:人件費37.0%、物件費56.6%

上記の通り、この15年以上の間、みずほ銀行は経費に占める人件費の割合を大幅に上下させてきたといえます。イベントが多かったため、致し方ないというところかもしれません。

しかし、この2年ほどは経費全体に占める物件費の割合が減少してきました。

システム統合は一段落し、これから違う戦略分野(=フィンテック等)に投資が開始できるというタイミングではないでしょうか。

みずほ銀行はどのような局面にあるのか、今後想定される事態はどのようなものか

以上見てきた分析で言えることは何でしょうか。

筆者は以下の通り考えています。

  • まず「今後10年で従業員6万人の3割にあたる1万9千人分の業務を減らす。希望退職の募集などはせず、退職数と採用数の調整で対応する。事務部門を効率化して営業部門に再配置する。みずほ銀行・みずほ証券・みずほ信託銀行の事務作業を別会社に移すことも検討する。」ということですが、10年で1万9千人分の「業務量を減らす」と言っているだけです。単純な人員数削減という観点でのリストラを意味する訳ではありません。
  • しかも、銀行の人員は砂時計型の人員構成になっています。すなわちバブル世代と2007年以降の若手世代が多く、その間の世代が少ないということです。
  • このような人員構成であれば、万が一にも10年間で1万9千人を削減するとしても、無理せず採用抑制だけで削減人員数のかなりの部分をカバーできるでしょう。
  • そもそも10年もかけて人員を削減すると計画したとしても、ほとんど現状追認以外の何物でもありません。リストラで10年もかけていたら何の意味もないのです。
  • よって、今回の1万9千人の業務量削減ということは、正確には1万9千名分の「事務量をAI等も活用しながら削減」し、その事務量削減で浮いた人員を営業等へ再配置したいということなのです。これは前回の三井住友銀行の事例とも同様です。
  • この動きをサポートするのが経費に占める物件費の割合低下です。すなわち、みずほ銀行はシステムを追加で開発できる状況になってきたということです。これも三井住友銀行同様でしょう。
  • 特にみずほ銀行の場合は、懸案だったシステム統合がやっと来年に終了します。この状況を利用して、フィンテック始め攻めの施策に加えて、内部事務量の削減を目指すのです。
  • 一方で、足下では正社員数が急増しています。これは留意が必要な事項です。
  • 筆者がみずほ銀行の人事戦略を想定すると「全体人員の3割の業務量を減らす=内部事務の半分は少なくとも減らす」「よって、浮いた事務人員は営業やシステム開発等に回す」「足下で正社員数を増加させ、来年から始まる有期雇用の無期化に伴う臨時従業員数削減をカバー」となります。
  • 従って、みずほ銀行に今後起きると想定されることは、事務から営業等への人員シフトであり、単なる人員の削減ではありません。
  • 加えて、フィンテック・IT・デジタル対応として余剰の店舗削減等物件費の低下も当然に狙っていくでしょう。ですから、支店での事務・総務を行っている銀行員が本部事務セクション・センターへの異動もしくは営業への配置転換を迫られるというのは十分にありそうです。
  • なお、みずほ銀行が採用している臨時従業員(=非正規雇用)は1万1千人強となっています。万が一、みずほ銀行が1万9千人を削減しようとしても臨時従業員の削減では足りません。この点は、前回説明した三井住友銀行とは事情が異なります。ただし、10年もかけて事務量を削減していくのですから、何ら影響はないといえます。
  • なお、前回も触れましたが、これから有期雇用契約の無期雇用契約への転換がなされ始めます。このタイミングでは臨時従業員(=有期雇用社員)の雇止めが大量に起こる可能性もあるのです。以下は参考記事です。

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