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金融庁の金融レポートにみる銀行の運用商品販売の今後

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今回は2017年10月に公表された金融庁の金融レポートから、金融庁が問題意識を持つ「銀行の顧客本意の業務運営」等についてみていきます。

この金融庁の問題意識を確認することにより銀行の個人・リテール部門における販売商品・販売方法の将来的な方向性等がみてとれるでしょう。

金融システムレポートの内容

以下、金融レポートの内容の中で筆者が気になる項目を取り上げます。

  • 括弧内の数字は金融レポートの該当ページとなります。
  • 「→」以降には筆者のコメントを記載しています。

家計が保有する金融資産構成の日米比較

我が国と米国の家計金融資産残高全体の推移を比較すると、過去 20 年間で米国では3倍以上に大きく増加している一方、我が国では約 1.5 倍の増加に留まっている。その構成については、米国では、年金・保険等を通じた間接保有分を含む株式・投資信託の割合が1995 年末において既に 39%と高い水準にあったが、2016 年末においては 46%と、更にその割合が高まっている。一方、我が国においては、現預金が過半を占めるという構造が過去 20年間を通じて変わっておらず、株式・投資信託の割合は間接保有分を含めても 2016 年末において19%に留まっている。(P49)

家計金融資産については、実額ベースでは、米国が2,343兆円(1995年)から8,821兆円(2016年)と3.3倍まで拡大したのに対して、日本は1,182兆円(1995年)から1,815兆円(2016年)と1.5倍までしか拡大していません。
1995年当時は日本の家計金融資産は米国の約1/2だったはずですが、今は1/5程度に留まっているのです。

これを金融庁は問題意識として持っています。特に銀行の投資運用商品の販売姿勢等に疑問をもっていることが後の項目でうかがえます。

投資信託の販売/テーマ型投資信託

高配当の海外株式、ハイイールド債等、話題性のある分野を投資対象とするテーマ型投資信託は、我が国で売れ筋商品となっているが、概ね、人気のある時は基準価額が堅調だとしても、ブームが過ぎると基準価額が下がるおそれがあり、実際、そうした動きをしている投資信託も見られる。
基本的に、テーマ型投資信託は売買のタイミングが重要な金融商品である。しかしながら、アクティブ運用投資信託のパフォーマンスが示唆するように、適切な売買のタイミングを継続的に見極めることができる投資家はプロの中にも少ないと考えられ、個人投資家にとっては更にハードルが高いと考えられる。
過去の株式投資信託の販売動向を見ても、ブームに流され、株価のピークにおいて株式投資信託が最も売れる傾向が見られているが、個人投資家が安定的な資産形成を行うためには、こうした売買のタイミングを気にする必要のない、資金投入の時期を分散する積立投資を行うことが有益な方法と考えられる。(P55)

簡単にいえばテーマ型投資信託は日本では売れ筋商品だが、個人投資家にとってはハードルが高いと金融庁は認識しているということです。

投資信託の販売手数料等の現状

販売額上位5商品について、販売手数料率別で見ると、3%以上の商品の割合が高まっており、足下で投資信託の販売が手数料の高い商品にシフトしつつあることが窺われる。(P56)

→投資信託の平均販売手数料(主要8行および地域銀行10行の回答によるもの)は、2016年下期が2.23%となっています。そして2016年下期には販売した投資信託の48%が手数料が3%以上になっているのです。また、ファンドラップ(金融機関が投資一任で運用するもの)の手数料は年率平均で2.2%(2017年3月時点)となっています。これも資産構成割合が似ている一般のバランスファンドに比べて手数料が高いと指摘されています。

これに対する問題意識が金融レポートのP57に記載されています。以下引用します。

販売手数料等の高低のみで、その商品の良し悪しを評価するものではないが、販売会社においては、販売手数料等の水準が顧客に提供されるサービスの対価として見合ったものか否か、同種の金融商品においてより販売手数料等が低い商品が存在するにもかかわらず販売手数料等が高い方を販売・推奨等していないか、顧客が正しい選択をできるよう販売手数料等の詳細について情報提供がなされているか、といった観点から今後検証していくことが重要である。

銀行は売りたい商品、儲かる商品ばっかり売っていないか、本当に顧客のために情報提供しているかという金融庁からの懸念が示されています。

インデックス運用投資信託とアクティブ運用投資信託の販売状況

投資信託には、指数に連動することを目指すインデックス運用投資信託と、銘柄分析等を通じて市場平均以上のリターンを目指すアクティブ運用投資信託の2種類があるが、一般に、信託報酬を比較すると、銘柄分析等にコストがかかるアクティブ運用投資信託は、インデックス運用投資信託より高くなる傾向にある。
仮にそうした手数料等が高かったとしても、それを大きく上回るリターンが得られれば、顧客の立場から問題とは考えられない。しかし、さほどリターンが得られていないにもかかわらず、手数料等が高いとすれば、問題が生じ得る。
こうした観点から、10 年以上存続している我が国の株式アクティブ運用投資信託 281本の信託報酬控除後のリターンについて見ると、過去 10 年間の平均リターンは年率 1.36%であり、全体の約3分の1の商品のリターンがマイナスとなっている。また、インデックス運用投資信託と比較しても、株式アクティブ運用投資信託 281 本の 71%が日経 225 を参照するインデックス運用投資信託(純資産総額上位5銘柄)の過去 10 年間のリターン(年率 2.37%(信託報酬控除後))を下回っている。(P59)
→ここまで来ると金融庁から言われたい放題ですが、日本の運用会社が組成している運用商品のほとんどは、市場の平均を目指すインデックス運用に負けている(=買う価値がない)と金融庁は指摘しているのです。

投資信託の回転売買の状況

「平成 27 事務年度 金融レポート」では、投資信託の販売において、いわゆる回転売買が行われているのではないかとの問題提起を行った。
投資信託全体の平均保有期間を見ると、2014 年度より少しずつ伸びているが、3年未満の期間に留まっており、依然として、回転売買が行われていることが窺われる。(P62)

→2016年度末の投資信託全体の平均保有期間は2.88年です。2013年の1.98年からは長くなっていますが、それでも長期投資にはなっていないということです。ここには記載はありませんが、金融庁は銀行が儲けのために回転売買をセールスしているとも認識しているでしょう。

販売会社と運用会社の利害関係

同一グループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ運用会社は販売会社の影響が強いとの指摘がなされている。 このような日系の運用会社28社について、役員の受入状況を見ると、その全てが販売会社等から計 175 名の役員を受け入れており、全役員の 75%を占めている。(中略)
3メガバンクグループでは、リテール向けに取り扱っている投資信託の本数、販売額それぞれにおいて系列運用会社が提供するものが約6割に達しており、引き続き系列の販売会社と運用会社の間に強い結びつきがある。(P63~64)

→本件は、販売会社と運用会社の結び付きが強すぎて顧客のためになっていない、利益相反になっているのではないかとの金融庁の問題意識が表された項目です。

同一グループ内に販売会社を持つ大手運用会社における設定投資信託の特徴

同一グループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ運用会社のうち、運用資産
残高上位5社の大手運用会社(2017 年3月末時点)が 2014 年度に設定した公募株式投資信託(インデックス運用投資信託を除く)は合計 182 本となっている。これらの投資信託は、設定後2年間における手数料等控除後の顧客パフォーマンスが平均▲1.5%と低調で、全体の6割強の投資信託で顧客パフォーマンスがマイナスとなる等、コストに見合ったパフォーマンスが上がっているとは言い難い。また、純資産総額の状況を見ると、設定から6ヶ月後に合計で 1.4 兆円強の運用残高を集めているものの、設定から2年後には約3割減少しており、短期間に資金が流出する傾向にある。また、これらの大手運用会社における年度別(2014年度~2016年度)の公募投資信託の設定額(販売額)を見ても、設定から3年以内の新規投入商品の割合が約3割を占めており、設定後間もない目新しい商品が販売されている傾向がある。(P65)

大手運用会社の公募株式投資信託はコストに見合った運用パフォーマンスをあげておらず、運用も長期目線ではなく短期目線の商品であるということを金融庁は指摘しています。

そのため以下のように当該項目で記載されているのです。

いずれにせよ、真に顧客にふさわしい商品が販売されているか、リスク等について十分な理解が得られているか等ついては、引き続き検証していくことが重要である。

顧客の利益につながる商品の提供

同一グループ内に販売会社を持つ大手運用会社において、顧客の利益につながる商品がありながら、必ずしも顧客に届けられていないことの背景としては、これらの運用会社が販売会社とのリレーションを重視し、販売会社の販売しやすい商品を組成し、販売現場においては、売りやすい商品としてテーマ型投資信託等の売れ筋商品に偏重した商品提案や短期の売買を勧めていることがあるとの指摘が存在する。
販売現場において収集した情報を基に、売れると予想される商品を組成し、積極的に販売するマーケティング手法は一般的なものと考えられ、こうして組成された新商品や売れ筋商品は、顧客資産を短期間で集めることができると考えられる。しかしながら、こうした商品は低調なパフォーマンスにより、保有期間の短期化、不安定な運用資金による運用成績不振、純資産総額の伸び悩みといった悪循環につながってきたとも考えられる。
このように、売れると予想される話題性のある目新しい商品を顧客ニーズと認識して次々と商品化し、積極的に販売してきたこともあり、我が国では、純資産総額が 100 億円以下の小規模投資信託が全体の8割超を占めるに至っている。これらは家計の安定的な資産形成を阻害してきた要因の一つと考えられ、売れる商品が顧客ニーズを必ずしも表しているのではないとの認識の下、資産を増やす商品の組成、販売が行われていくことが期待される。(P67)
→家計の安定的な資産形成を阻害してきた要因の中には、金融機関の商品組成、販売姿勢があるというのが金融庁の指摘ということです。

今後について

これらの金融庁の指摘、問題意識は銀行員には耳の痛い話ではないでしょうか。

筆者としては、金融庁の指摘は完全に核心をついていると感じています。

このような金融庁からの指摘を通じて、お客様にとって適切な運用商品が販売されるようになることを願っていますし、そうしないとお客様からの信頼を得られないでしょう。

また、投資信託を販売する銀行員がお客様にとって本当に必要だと思える商品を販売できるようになることをも願ってやみません。

銀行の方針や目標と、お客様との間で板挟みになりつらい思いをしたことは、ほとんどの銀行員にあるのではないでしょうか。

このような思いをしない職場でありたいものです。

 

なお、関連記事としては以下もご参照下さい。