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テイラー・ルールとは何か

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米国ではFRB(連邦準備制度理事会)議長人事が大詰めを迎えています。

2017年10月31日現在ではパウエル氏が有力とされていますが、共和党にはスタンフォード大のテイラー教授を支持している議員もいるようです。

テイラー教授はテイラー・ルールを提唱したことで有名な人物であり、テイラー教授がFRB議長に指名された場合には、ドルの金利が上昇するのではないかとされています。

今回はこのテイラー教授が提唱したテイラー・ルールについてみていくことにします。

テイラー・ルールとは

まずテイラー・ルールとはどのようなものかについてみていきます。

以下は野村證券のホームページから引用したものです。

米経済学者のテイラー氏が1993年に提唱した、中央銀行が誘導する政策金利の適正値をマクロ経済の指標により定める関係式。この式に基づく政策金利は、現在のインフレ率が目標インフレ率を上回るほど、また、実質国内総生産(GDP)成長率が潜在GDP成長率(その差を需給ギャップと呼ぶ)を上回るほど引き上げられ、反対にそれぞれの値が下回るほど引き下げられることになる。
米国の実際の政策金利との一定の整合性もあり、各国の金融政策決定過程で参考にする代表的ルール(拠り所)の一つとされるが、この関係式で決まる政策金利の妥当性については学術的な議論もある。

出典 野村證券ホームページ

このルールは現在のインフレ率が目標値からどれだけ乖離しているか、景気変動に対応する需給ギャップが均衡値からどれだけ乖離しているか、に応じて政策金利の調整を行うものです。経済状態に応じて、貨幣の供給量ではなく政策金利を変化させる金融政策ルールといえるでしょう。
簡単に言えば、現在の物価・経済の状況に対して適切な政策金利の水準がどの程度かを指し示すものなのです。

テイラー・ルールは、一般的には下記の数式によって定義されます。

 

政策金利=均衡実質金利+インフレ率+0.5 ×(インフレ率ー目標インフレ率)+0.5 × 需給ギャップ
※均衡実質金利=景気に中立な金利=潜在成長率、需給ギャップ=経済全体の総需要と総供給力の差

 

均衡実質金利とインフレ率の合計が、景気も物価も安定している場合の均衡名目金利となります。

数式をみれば分かるように、インフレ率が目標インフレ率と同率で、需給ギャップがない場合は均衡名目金利は政策金利と同じ水準となります。

よって「インフレ率が上がれば政策金利を上げる」というような政策金利の変更が行われることになります。これにより景気や物価を安定させることを目指すのです。

テイラー・ルールが指し示す政策金利水準

テイラー・ルールに基づく現在の政策金利の適正な水準は3%程度(元々の当該ルールのオリジナルの計算では3.75%とも試算されている)といわれています。

以下にはアトランタ連銀のホームページのリンク先を掲載しておきます。

このホームページでは一定の前提をおいてテイラー・ルールにおける政策金利の試算ができるようになっています。
https://www.frbatlanta.org/cqer/research/taylor-rule.aspx?panel=1

このルールによる適正な政策金利が3%程度であった場合、現行の米国の政策金利の誘導目標である1.00%~1.25%との乖離は非常に大きいものがあります。

テイラー教授がFRB議長になった場合の影響

現段階ではパウエル氏が有力と見られていますが、FRB議長にテイラー教授が就任した場合には、上記のテイラー・ルールに基づき米国の政策金利が引き上げられるのではないかと懸念している市場関係者は存在します。

現在のFOMC(連邦公開市場委員会、FRBの最高意思決定機関であり、FRBとFOMCの関係は日本で言えば日銀と日銀金融政策決定会合のようなもの)参加者の中長期目標の政策金利は2.75%であり、金利上昇圧力が強まることになるかもしれません。

前述の通り現在FRB議長に指名される可能性が最も高いのはパウエル氏のようです。

しかし、もし大方の予想が外れテイラー教授が指名されることになった場合には、どのようなことが起こるのでしょうか

あり得る一つのシナリオは、マーケットで利上げペースの加速が意識され、短期的には金利上昇圧力が高まるということです。ドル円も円安方向にいくかもしれません。

しかしながら、短期的には金利上昇があるとしても中長期的にみた場合には、そこまでの大きな影響はできないのではないかと筆者は考えています。

その理由はFOMCの議決方法にあります。

FOMCは7名の理事(うち議長と副議長が各1名)と5名の地区連銀総裁の合計12名が投票権を有します。

各メンバーは1票ずつしか投票権を保有しておりません。FRB議長はFOMCの議長もつとめますが、議決権としては1票しかもっていないのです。

FOMCは多数決によって金融政策を決定しますから、FRB議長が交代したからといってFOMC参加者全員の考え方がすぐに変わることはないでしょう。

また、バーナンキ元議長時代以降はFOMCはコンセンサスが政策決定の常態となっています。

したがって、テイラー教授がFRB議長に就任したとしても簡単には方向性を変更できないということです。
以上が筆者が考える簡単な短期から中期の想定です。