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サステナブル投資の類型

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GPIFが2017年7月にESG指数に連動した運用を開始したことでESG投資が注目を浴び始めています。

今回はESG投資を含む概念であるサステナブル投資についてみていきます。

サステナブル投資とは

サステナブル投資は、世代間の効率性と公平性を備えた長期投資をいいます。

UBSの定義では、サステナブル投資は「伝統的な投資アプローチに基づきながらも、新たに企業の環境、社会、ガバナンスその他の基礎的なサステナビリティ要素を投資判断プロセスにおいて考慮する。このバランスの取れた投資戦略により、競争力のあるリスク調整後リターンを生み出し、さらに投資を通じて、社会にプラスの影響を与えたいと願う投資家自身の価値観をポートフォリオに反映させる。」ということになります。

BlackRockの定義では、サステナブル投資は「社会や環境に好影響を及ぼすインパクトと投資収益を同時に追求する投資」となっています。

NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が定めるサステナブル投資の基準では以下の2つの原則を満たすものとされています。
1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること
2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること

筆者は個人的に冒頭に示した定義を気に入っていますが、上述の通りサステナブル投資は社会的責任(SRI)投資やESG投資を包含したものといえるでしょう、

サステナブル投資の分類・戦略

GSIA(Global Sustainable Investment Alliance、世界の社会責任投資に関わる団体の連合体)の分類ではサステナブル投資は以下に分類されます。

Sustainable investment encompasses the following activities and strategies:
1. Negative/exclusionary screening,(ネガティブ/排除・スクリーニング)
2. Positive/best-in-class screening,(ポジティブ・スクリーニング/ベストインクラス)
3. Norms-based screening,(規範に基づくスクリーニング)
4. Integration of ESG factors,(ESGインテグレーション)
5. Sustainability themed investing,(持続可能テーマ投資)
6. Impact/community investing, (インパクト/コミュニティ投資)
7. Corporate engagement and shareholder action.(コーポレート・エンゲージメント/株主行動)

ネガティブ/排除・スクリーニング

「特定の業界の株式や債券を投資対象から除外する投資手法」です。除外される業界の例としては、武器、たばこ、原子力発電、ポルノ、ギャンブル、アルコール製品などがあります。もっとも一般的なサステナブル投資の方法といえます。

ポジティブ・スクリーニング/ベストインクラス

「財務とESGの2つのスクリーニングを使用して選別されたセクターや企業等に投資する手法」です。エコファンドと呼ばれるファンドの投資手法が該当します。この投資手法は対象に合致した投資先のみに投資する形をとります。上述のネガティブスクリーニングは対象から除外する投資手法ですが、こちらは対象を特定する投資手法です。

規範に基づくスクリーニング

「国際機関(OECD、ILO、UNICEF等)の国際規範に基づいた投資手法」です。例えば、オスロ条約によって禁止されているクラスター爆弾関連企業に投資しない、というのがわかりやすい例でしょう。近時は児童労働もテーマとして挙がっています。

ネガティブスクリーニングは特定の「業界」でしたが、規範に基づくスクリーニングは特定の「企業」が基本的には対象となります。

この規範には国連グローバル・コンパクトも当然含まれます。国連グローバル・コンパクトは4分野10の原則からなっており、人権擁護、強制労働・児童労働の排除等が原則には含まれています。

人 権 人権 原則1: 人権擁護の支持と尊重
原則2: 人権侵害への非加担
労 働 人権 原則3: 結社の自由と団体交渉権の承認
原則4: 強制労働の排除
原則5: 児童労働の実効的な廃止
原則6: 雇用と職業の差別撤廃
環 境 人権 原則7: 環境問題の予防的アプローチ
原則8: 環境に対する責任のイニシアティブ
原則9: 環境にやさしい技術の開発と普及
腐敗防止 人権 原則10: 強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止の取組み

出典:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

ESGインテグレーション

「通常の運用プロセスにESG(環境、社会、コーポレート・ガバナンス)要因を体系的に組み込んだ投資手法」です。既存の投資先判断の中に、財務情報だけでなく、非財務情報、すなわちESG情報をともに織り込んで判断していこうというものです。現在広く普及しつつある状況です。

特に年金など長期投資性向の強い資金を運用するファンドなどが、将来の事業リスクや競争力などを勘案する上で積極的にESG情報を活用し、市場平均よりも大きなリターンを目指すために用いられることが多いといわれています。

持続可能テーマ投資

「再生エネルギー、環境技術、農業等のサステナビリティのテーマに着目した投資手法」です。再生可能エネルギーファンドがわかりやすい例でしょう。

インパクト/コミュニティ投資

「社会、環境、コミュニティに与えるインパクトを重視する投資手法」です。ワクチン債、グリーンボンド等が例として挙げられます。インパクト投資の中で、社会的弱者や支援の手が行き届いていないコミュニティに対するものは、コミュニティ投資と呼ばれています。

社会や環境への「インパクト」を行う企業には、社会企業と呼ばれるものが多く、上場していない企業がほとんどです。そのため、インパクト投資は非上場企業や特定のプロジェクトなどに投資を行うことが主流となっています。

加えて、ソーシャルインパクトボンドもインパクト投資の一類型になります。このソーシャルインパクトボンドは官民連携のインパクト投資の手法です。行政、社会的投資家、NPO等非営利組織、評価機関が連携して、社会的成果に基づく質の高い行政サービス提供を実現することを目的としています。
行政サービスを複数年にわたり民間のNPOや社会的企業に委託し、その事業費をインパクト投資家から調達します。事業が実際に成果を上げた場合に、削減された行政コストを原資に投資家に対して償還を行う仕組みです。
これまでに英国、アメリカ、オーストラリア等で導入実績があり、日本でも導入が検討されています。英国では、軽犯罪の受刑者を対象にした再犯防止の取り組みからスタートしており、受刑中に心理ケア等の支援を継続的に行うことで再犯率を大幅に下げることに成功しています。

コーポレート・エンゲージメント/株主行動

「主にESGのエンゲージメント方針に基づき、株主として企業に働きかけ(議決権行使を含む)を行う投資手法」です。

今までの6つの投資手法は、投資先選択に関するものであったのに対し、コーポレート・エンゲージメント/株主行動は投資先との関わり方に関するものです。

先の6つの投資手法との組み合わせで使われることが多く、対話のみならず株主としての議決権行使も当然に用います。いわゆる物言う株主です。

まとめ

日本のサステナブル投資は当初はネガティブスクリーニングによる投資が一般的でした。現在は、徐々にESGインテグレーションが広まりつつあります。しかし、日本でのサステナブル投資はまだまだこれからというところでしょう。

今後は(一般的な)投資でも、ネガティブスクリーニングに加えて、運用プロセスにESG分析を統合(ESGインテグレーション)することが一般的になっていうものと想定されます。

さらにインパクト投資も増加していくでしょう。

また、欧州の年金基金が注目しているのが2015年に国連が発表した「持続可能開発目標(SDGs)です。SDGsは気候変動やクリーンエネルギーの推進、極度の貧困など社会的・環境的な課題への取り組みを目指したものであり、SDGsを経営戦略に組み込む企業に投資したファンドを求める声が強まっているようです。

企業はこのような環境に囲まれており、その企業と取引をする銀行としても、今まで述べてきたサステナブル投資については認識をしておいた方がよいでしょう。

例えば、取引先企業のサプライチェーンの一部に児童労働の問題があることが発覚すれば、その企業は資本市場から投資がなされなくなる可能性もあるわけです。

取引先がサステナブル投資に対してどのような対応をしているのか(IR、サステナビリティレポート、統合報告書等)、法人担当の銀行員は一度確認しておいた方が良いでしょう。