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厚生年金基金の減少(解散、代行返上)と総合型企業年金基金の創設

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厚生年金基金という用語をお聞きになったことがある方は多いのではないでしょうか。

ピーク時には1,800基金超、加入者数1,200万人を超えていた企業年金の一つの形でした。

この厚生年金基金は現時点ではほとんど存続していません。

今回は金融知識の一環として、この厚生年金基金の推移についておさらいをしておきます。

厚生年金基金とは

厚生年金基金は、厚生年金保険に加入している会社の事業主と従業員で組織する公法人で、国の厚生年金保険の給付(老齢厚生年金)を代行し、その上に基金独自の給付を上積みして、厚生年金保険のみに加入している場合より有利な年金・一時金を支給することができる仕組みです。

細かくいえば、会社(設立母体が複数の場合が総合型)が厚生年金基金を設立し、国(日本年金機構等)に代わって厚生年金保険料の一部を収受・記録、年金資産の管理・運用、年金額の裁定(記録に基づく決定)、支払いの業務を行うという仕組みになっています。

名前が似ている厚生年金は公的年金であり厚生年金基金とは異なります。

公的年金は、基礎年金である国民年金を1階部分とし、それに上乗せされる形で2階部分として厚生年金保険という構造になっています。

以下は年金制度のご参考記事です。

www.financepensionrealestate.work

厚生年金基金設立の背景

厚生年金基金は、2階部分の厚生年金保険の運用の一部を企業がみずから行い、2階部分の上に、3階部分(上乗せ部分、加算部分)をさらに上乗せしていました。

老齢厚生年金の給付を基金が代行する代わりに、基金が国の資金を代行して運用ができていたため、運用利回りでプラスアルファが稼げていた時期には、基金独自の給付を上乗せし、加入員の受け取れる年金額を増やすことで、充実した生活保障を達成することができていたのです。

すなわち、本来は国が行うはずの運用部分を代わりに運用し、元本が大きくなった分だけの超過収益を厚生年金が享受し(国には決まった運用利回りだけを実質的に返せばよかったため、運用がうまくいけば差額を基金が享受できた)、その超過収益を元手に加入員の年金額等を充実させていたということです。

しかし、バブル景気が終わりと基金の運用利回りが低迷し、各基金の財政が悪化し始めました。

厚生年金基金の現状 

2014年4月に厚生年金基金を原則廃止とする改正法が施行され、厚生年金基金の解散や代行返上が進んできました。

同業種の中小企業が多数集まって設立された総合型の厚生年金基金においては、運用損失による積立不足が代行部分にまで食い込む「代行割れ」が多数発生し、事業所の連鎖倒産や厚生年金本体の財政への悪影響までが懸念されたことから、抜本的な制度改正が行われたのです。

代行割れとは厚生年金基金の保有資産が最低責任準備金(厚生年金=国の代行部分を給付するために基金が最低限保有していなければならない額)に満たない状況のことをいいます。

このままでは厚生年金基金が代行割れのままどうしようもなくなり、国の財政に影響が出てしまう可能性があったため、厚生年金基金の解散、代行返上等を促すことになったのです。

代行返上とは

代行部分の資産を国に返還したうえで、すべての加入員・受給権者にかかる独自給付(上乗せ部分)だけの確定給付企業年金(DB)に移行する手続きです。

代行返上実施の最大の問題点は、全事業所から同意を得る必要があることです。1つでも代行返上に同意しない事業所があると実施できず手続きには時間も手間もかかります。

解散とは

解散は、代行部分の資産を国に返還したうえで、残余財産を加入員及び受給権者に分配することです。厚生年金基金としては後継制度を用意しません。

代行割れしている基金では、基金の保有資産の全額が国に納付されることとなるため、加入員や受給権者に対する残余財産の分配はありません。

厚生年金基金数の推移 

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出典:企業年金連合会HP

上記の図表でも急激に厚生年金基金数が減少しているのがわかります。

直近の状況(2017年10月)では存続している総合型の厚生年金基金は実質的に23基金まで減少しました。

(厚生年金基金、企業年金基金の推移)

https://www.pfa.or.jp/activity/tokei/nenkin/files/genkyo.pdf

出典:企業年金連合会HP 

厚生年金基金の後継制度

総合型DBは、厚生年金基金の解散もしくは代行返上の受け皿として立ち上げられた企業年金基金です。

総合型厚生年金基金と同様に、設立母体が複数の企業がある場合に、一般的には総合型と呼ばれます。

厚生年金基金で代行部分の返上を選んだ基金1,252のうち、945基金がDBへ移行しています(2017年10月時点)。そのうちのかなりの部分は総合型DBであるものと思われます。

また、企業単独でのDBやDC(確定拠出年金)への移行を行った企業もあるでしょう。

厚生年金基金の役割は実質的に終了しました。低金利環境時代に「うまい話はない」ということですが、年金制度自体は高齢化の環境下、ますます重要になってきています。

以上が厚生年金基金についての基礎知識です。銀行員にとっては、この程度をおさえておけばよいのではないでしょうか。