銀行員のための教科書

銀行員を応援するブログを目指します

ブロックチェーンによる本人確認の共有化とその将来像

f:id:naoto0211:20170926203730j:image
金融機関がブロックチェーンを利用し、顧客情報を共有して顧客の利便性向上、事務負担の軽減を目指す動きが出てきています。

今回はこのブロックチェーン技術の活用事例と、今後の展開について考察します。

ブロックチェーンによる本人確認の共有化実証実験

3メガバンクはブロックチェーン技術を活用し、利用者が本人確認を済ませておけば、別の銀行や証券会社との新たな取引を進めやすくする実証実験を始める計画です。

三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは、口座開設時に求められる本人確認を一度済ませば、以降はいずれの銀行でもこの手続きなしに口座を開けるようにする。3メガと金融庁は、こうした金融とITを融合したサービス「フィンテック」の実証実験を11月に始め、来春までに課題を洗い出す。地方銀行や証券会社にも参加を呼びかける。
口座を開くには通常、金融機関ごとに運転免許証などの身分証明書を窓口で示し、他人のなりすましでないことを証明する必要がある。実証実験では、3メガはコンピューターが監視し合うことで改ざんがしにくいとされる「ブロックチェーン」に顧客の個人情報を蓄積。別の銀行で口座を開く際には、行員がこれを参照して本人確認手続きを省けるようにする考えだ。
金融庁は21日、こうしたITと金融の融合を狙った実証実験が既存の法律に触れないかなどを調べ、助言する専門チームを庁内に作ると発表した。3メガの実証実験についても、この仕組みを使って後押しする。

朝日新聞記事より引用

http://www.asahi.com/articles/ASK9P4JXLK9PULFA01J.html

(参考)金融庁FinTech実証実験ハブの設置について
http://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170921/20170921.html

本人確認の共有化メリット

銀行利用者において顧客の本人確認はかなりの事務負担を伴うものです。

銀行ではキャッシュカードの受け取りに1週間程度はかかりますし、ネット銀行でも利用者は郵送による書類受け取り(本人が実際に届出住所に居住しているか確認するため)が必要です。

銀行は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等により厳格な本人確認が要求されているのです。
(参考)全国銀行協会HP 犯収法関連
全国銀行協会

この事務負担が非常に重い本人確認手続きを銀行が共通化できれば、銀行にとっては事務負担の軽減という形で大きなメリットを享受します。

そして、当然ながら顧客にとっても登録を一度しておけば他の金融機関との取引開始がスムーズになるためメリットがあるのです。

今までであれば、このような本人確認を行うプラットフォームを立ち上げるにはかなりの設立および維持コストがかかるため実現は難しい状況にありました。

データの管理負担、改ざん・消去対策、情報漏洩リスク対応等のためデータセンターを設立し運営していくということになったでしょう。

ところがブロックチェーン技術を活用すれば、情報漏洩・改ざんリスクの低減、システム運営コストの削減等が実現できる可能性があります。

これは銀行業界にとってはメリットのある話でしょう。

加えて、本人確認データ等を蓄積することで顧客のなりすましや疑わしい取引を調べることが業界として可能になるかもしれません。業界としての課題にはマネーロンダリング対応もあるのです。

まずは、この業界として共通の事務負担を解決することを目指して当該実証実験はなされていくものと想定されます。

今後の展開

このブロックチェーン技術を活用した顧客データの共通化は、本人確認のみならず個人信用情報の蓄積に発展していく可能性があります。

例えば現在は全国銀行協会が全国銀行個人信用情報センターを運営し銀行間で個人の信用情報について情報のやり取りを行っています。

このようなデータもブロックチェーンを使えば低コストで運営が可能となりますし、本人確認情報と信用情報を結びつければ銀行にとっては本人の特定・信用情報チェック等において利便性が増します。

そのためこのような実験は今後も続いていくでしょう。

他業界との連携

不動産業界では積水ハウスが2017年度内をめどに、賃貸住宅における入居契約等の情報管理システムをブロックチェーン上で構築し、運用を開始すると発表しています。

そして、2020年をめどに、積水ハウスグループにおける賃貸住宅のサービス提供をブロックチェーン上で行うとしています。

このサービスの中には、当然ながら賃貸住宅の入居者管理が入っています。

そして将来的には銀行、保険、不動産登記、マイナンバー等他業種分野のブロックチェーン技術を活用したコンソーシアムとの融合を図るとしているのです。

これは積水ハウスが主導するブロックチェーン上の情報管理システムに限っても、賃貸住宅の入居者情報という個人情報が銀行にも連携される未来が来るかもしれないということです。

例えば、入居者の情報を有効に活用すればかなり個人の信用力を調査することが可能になります。家賃の額、勤め先、家族構成、元の住所、実家の連絡先、会社からの家賃補助があるか、住居をキレイに使う傾向があるか(本人の性格・借入延滞の可能性等)、近所とのトラブルはないか等の情報が得られる可能性があるのです。

このような将来像が今回のブロックチェーンによる本人確認の共有化にはあるのではないかと想定しています。

少し恐ろしい感じはしますが、個人情報は統合されていく時代に入ろうとしているのかもしれません。