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iDeCoを銀行が積極的にセールスしない理由とは

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2017年1月から個人型DC(iDeCo)の対象者が拡大しました。

これによりiDeCoの普及拡大が見込まれています。

一方で銀行の店頭ではiDeCoの積極的なセールスは行われていないのが現状です。

今回はなぜiDeCoを銀行があまりセールスをしないのか考察します。

iDeCoの現状

2016年12月時点で30万人強だった個人型DC(iDeCo)の加入者は、2017年5月には52万人弱まで拡大しています。

これは順調な拡大ともみえますが、4、5月の加入者数は伸び悩んでおり拡大が一服しかねない状況です。

iDeCoは日本最強の運用商品といえるほど個人にとって税務メリットが多く、個人の資産形成においては日本でこれ以上に優れた制度はないでしょう。

参考記事

そのiDeCoは銀行の店頭では積極的にセールスがなされていません。日本においては銀行が顧客から受ける信頼性は非常に高いものがあります。銀行でiDeCoの説明を受けられるようになればiDeCoの普及は更に加速していくでしょう。

iDeCo普及の阻害要因(兼務規制)

2016年の改正DC法は2001年のDC導入以来、実質的に初めてのDC運用関連の見直しでした。

しかしながら未だに課題として残っている分野があります。

それがいわゆる兼務規制(他に専坦規制、兼業禁止規定とも言われます)です。

兼務規制とは、金融機関において預金や投資信託の販売を行っている営業職員がDCの運営管理業務を同時に行ってはならないという規制です。

以下、参考までに厚生労働省のホームページから引用しておきます。

確定拠出年金制度の法令解釈について
厚生労働省年金局長より通知(平成13年8月21日付年発第213号)抜粋
第6 行為準則に関する事項
2.確定拠出年金運営管理機関の行為準則

(5)いわゆる営業職員に係る運用関連業務の兼務の禁止
(1) 禁止の趣旨
 確定拠出年金運営管理機関は、制度上もっぱら加入者等の利益のみを考慮して中立な立場で運営管理業務を行うものとして位置づけられているところであり、こうした趣旨に基づき、法第100条において、特定の運用の方法に係る金融商品について指図を行うことを勧める行為の禁止をはじめ、各種の禁止行為が規定されているところである。したがって、金融商品の販売等を行う金融機関及び国(郵政事業庁)が自ら確定拠出年金運営管理機関として運用関連業務を行う場合には、あくまでも中立な立場で業務を行い、当該禁止行為が確実に行われないようにするとともに、確定拠出年金運営管理機関に対する国民の信頼が確保されるよう、金融商品の販売等を行ういわゆる営業職員(主務省令第10条第1号に規定する「運用の方法に係る商品の販売若しくはその代理若しくは媒介又はそれらに係る勧誘に係る事務を行う者」をいう。)は運用関連業務を兼務してはならないこととしたものであること。
(2) 運用関連業務を行うことができる者(以下「運用関連業務者」という。)について
 上記(1)の趣旨を踏まえ、運用関連業務者は運営管理業務の専任者が行うことを基本とし、やむを得ず兼任者で対応する場合にあっても、当該兼任者は、個人に対し商品の販売若しくはその代理若しくは媒介又はそれらに係る勧誘に関する事務を行う者であってはならないこと
出典 厚生労働省ホームページ

銀行における悩み

以上述べてきた通り、銀行の営業担当者はDCの加入者に対してDCの運用商品に関する情報提供を行うことが基本的にできません。営業現場(例えば店頭)にDCの運営管理業務を専門に行う専坦者と金融商品の販売を行う営業担当者がいる場合には、専担者が情報提供を行うことになるのです。

なお、銀行の営業担当者はDC加入前のお客様にiDeCoの制度を紹介すること等は限定的に認められています。しかし、お客様の側からすると銀行の営業担当者とは継続的な付き合いがあるわけです。実際に制度に加入し、DCの運用商品選択でも相談したいというニーズがあるでしょうが、その場合には銀行の営業担当者は相談に乗ることができないのです。

iDeCoを銀行の営業担当者が案内する場合には、このような規制が制約となっています。

ただし、DCの運営管理機関ではない銀行では営業担当者がお客様の個別相談に乗ることは、不可とまではいえません。ただし、自行でDCの運営管理機関業務を行っていない以上、営業政策として営業担当者にDCの商品説明を行わせるのは難しいでしょう。自行には一切の儲け、すなわちメリットがないからです。

今後の動向

様々な金融機関等から上記の兼務規制については見直しの要望が挙がっています。

社会保障審議会企業年金部会における議論でも第14回会合において「運営管理機関業務のうち、運用の方法に係る情報提供業務は、営業業務を行う者が兼務しても中立性を欠くことはないため、兼務できる方向で検討」とされています。

お客様からみた場合、銀行の営業担当者にはiDeCoの相談のみならず、NISAや個人年金保険等総合的な制度・商品の説明を求めているものと想定されます。

筆者としても是非とも規制緩和がなされて欲しいと願っています。

一方で銀行の営業担当者もこれからは投資信託、保険に加えNISA、iDeCo等広範な商品知識・制度知識・税務知識が要求され、かつお客様にとって最適な商品を勧めることが必要になってきます。これができなければ金融のプロとしてお客様に支持されなくなるでしょう。

単純な知識だけであればインターネットでいくらでも情報が手に入る時代です。

上記のようなお客様への総合的な提案ができなければ銀行の窓口はそのうち無くなっていくでしょう。

銀行員にとっては要求されるものが高く厳しいでしょうが、お客様に本当に感謝される営業とはお客様にとって最善の提案をすることだと筆者は確信しています。

お客様にとって最高の提案を銀行が行えるようになることを待ち望みながら、今回の考察を終わります。