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株式給付信託は株式報酬の本命か

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自社株式を役員に報酬として付与する企業が増加しています。

2013年6月の株主総会時点では役員報酬に株式給付信託を導入していたのは4社でしたが、300社を大きく超えています。

今回は役員報酬における自社株報酬手段として導入増加の続く株式給付信託について考察します。

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株式給付信託とは

株式給付信託は株式報酬制度の一種です。

業績目標の達成度や役職に応じて、事前に定めるルールに基づくポイントが役員に交付され、一定期間経過後にポイント相当分の株式を役員に対して交付する仕組みです。この点については、あらかじめ株式を交付しておく特定譲渡制限付株式とは異なります。

資金拠出者は企業であり、信託銀行が株式の取得、ポイントの管理、株式の交付等を行います。役員個人に金銭的な負担はありません。

株式給付信託の特徴

株式給付信託は非常に柔軟性の高いスキームです。

特定譲渡制限付株式が業績連動型とすることが難しい(以下の記事ご参照)のに対して、信託型の株式給付信託は業績連動型とすることに何ら問題はありません。

大まかに言えば、株式給付信託は欧米で主流のスキームと同じであり海外投資家には導入が受け入れられやすいと想定されます。

また、業績の上昇にも、株価の上昇にもインセンティブが働く設計とすることが可能であり、株式報酬型ストックオプション(いわゆる1円ストックオプション)の逆インセンティブ問題(以下の記事ご参照)よりも優れている側面があります。

業績連動型とする場合、指標の柔軟性も面白いところです。例えばCSRの観点から電気自動車の普及率を目標指標としても良いのです(ただし、株主総会での決議が必要)。

企業の実情や企業理念・ヴィジョンに合致する目標指標を作り、それを投資家にアピールしていくことが可能となるのが株式給付信託の特徴なのです。

この信託方式は、コーポレートガバナンス・コードの制定趣旨に最も適合した役員報酬制度だといえます。

役員個人にとってのメリット

株式給付信託には株式報酬型ストックオプションと比較して、役員個人にとってメリットがあります。

株式報酬型ストックオプションは権利行使時に株式取得にかかる納税が必要となります。

手に入った株式を売却できるのは権利行使から1年後程度ですから、役員個人にとっては納税が先に発生し、実際のキャッシュが手に入るのは後になります。

株式給付信託はインサイダーの問題をクリアしているため、役員に交付する株式の一部を金銭に最初に換価しておくことができます。役員個人の納税資金を事前にキャッシュで準備しておくことが可能となるのです。

ここが株式給付信託における役員個人のメリットとなります。

税務面のポイント

業績連動型の株式給付信託は、会社側にとっても税務メリット(損金参入)が可能です。
これは特定譲渡制限付株式よりも優れています。

株式給付信託では業績連動給与の要件を充たしておけば役員に対する株式の交付時期は、在任時だろうと退任時だろうと損金参入が可能です。

特定譲渡制限付株式では業績連動型とする場合は損金参入の対象となりません。

これは納税面だけでみれば導入企業のコスト負担が株式給付信託の方が低いということを意味します。

なお、損金参入が認められる業績連動給与の要件は、交付株式数の算定方法が、業績連動指標(有価証券報告書に記載されるもの)によって算出されるものとなっています。この業績連動指標は単年度のみならず複数年でも可能です。

よって各企業の中期経営計画とリンクさせる役員報酬制度も株式給付信託では問題なく導入できるのです。

株式給付信託を導入すべきか

役員向け株式報酬のカテゴリー内では、業績・株価向上へのインセンティブ性、企業の損金参入メリット、役員個人にとっての納税資金手当のどれをとっても株式報酬信託がスキーム上は優れています。

少なくとも大企業においては、特定譲渡制限付株式よりも株式給付信託の方が導入メリットが上回るでしょう。

ただし、株式給付信託を導入しているのは大企業が中心です。また、2017年の株主総会では特定譲渡制限付株式を導入する企業が急増しました。

この背景は株式給付信託の導入およびランニングのフィーが高いということになるのでしょう。

そもそも株式給付信託で扱うような役員報酬(株式報酬)の対象者は企業に何人いるでしょうか。数十人の役員に株式報酬を導入するために数百万円から数千万円のフィーを払うのは本末転倒だと考える企業が存在してもおかしくはありません。

株式給付信託の唯一のネックはフィーが高いことといえるのです。

以上より、株式給付信託は株式報酬の本命ではありますが、大企業中心に導入がなされ、中堅企業が導入する特定譲渡制限付株式と市場を二分していくことになるものと想定します。

 

以上、株式給付信託についてみてきました。
銀行員にとってみれば系列もしくは親密な信託銀行があるのであれば、取引先のニーズに合わせて信託銀行を紹介し、株式給付信託導入を企業に促すのも接点を増加させる意味で有効ではないでしょうか。

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